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怪物のnobiiitaのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
3.5
それぞれの人物が発する言葉や行動に内包される意味とそれが生み出す文脈を丁寧に描き出す作りは、さすが是枝さんであり坂元さんだなあ!と。
あ、この感じ、このひと、どこがどうってハッキリ言えないけどなんか少しヤバいかも、というような、そういうアンテナが常に刺激される。
そして映画が進むにつれその違和感に対する答え合わせがなされていく、という構成はわかりやすい。

ただ、今作はそうやって細やかに丁寧に選ばれたはずの言葉や演出や場面が、“わかりやすい”“ステレオタイプ”な道具や装置となってしまっている=“消費”になってしまっている部分が多いような気がして少し残念だった。

…ただしこれは、映画を観るよりも先に読んだ、朝日新聞デジタルの『怪物』をめぐる鼎談・対話の影響を認めざるを得ないのだけれど。
あくまでマジョリティ側の意識を喚起することが目的であって、彼らのような「生きづらさを抱える子どもたち」に寄り添っているわけではない、マジョリティ側の理論補強のために彼らを使っただけ、そう思われてもしかたがないのだと思った。そんな批判を、対話することできちんと引き受けた是枝さんを信頼したい、と思った。
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