A8

すばらしき世界のA8のレビュー・感想・評価

すばらしき世界(2021年製作の映画)
4.0
三上という男にとって、この世界はあまりにも生きづらいところだった。

人の暖かさと社会の残酷さ

瞬間湯沸かし器のような性格で暴力も厭わない三上は、極道の世界に身を置いていたり、殺人(妻が襲われたことにより)をも犯した過去があった。
さらに、刺青が入っており厳つく強面な見た目。

しかし、彼のことを色眼鏡を外ししっかり覗いてみれば、まるでマンガでしか見たことがないような真っ直ぐで優しい性格の持ち主。

この社会で生きていくにはあまりにも不器用な男には、そんな不思議な魅力があった。


社会では生きていく中で身についてしまう色眼鏡。
怖そうだな、、
見窄らしいな、、
かわいい!
カッコイイ!
前科持ちか、、
この人怒ってる、、怒られた、、
冷たいひとだな、、
そのようにして、その人の心をみる前に勝手に偏見を持ってしまう。

せっかく人間として生きているんだから
人や物事の“表面”だけを見て接するのではなく、“心”までしっかりみなければならない

そう思ったのは、この作品の中で自分が1番印象的だった三上を取り囲む暖かい人間の愛情からである。

最初は業務的に対応していたケースワーカー

面白そうな企画のために彼の取材をしていた作家志望の青年

三上の前科を知ったことで万引き犯だと決めつけたスーパーの店長

皆、最初は三上のことを色眼鏡を通してでしかみていなかった。
しかし、三上の“心”をみたとき
彼らはそこで初めて三上という人物を知ったのである。

本来、見るべきものは“心”にあるのだろう
“物事の本質を見るべき”という言葉を思い出す。

そこから彼らは三上に対して偏見などなく彼に対して真っ直ぐに向き合っていった。

この社会では表面で判断することが多い。
それは偏見という。
だが、身を守るためや多忙な時間の中そんな暇や余裕を持つことはなかなか難しい。

でもやっぱり、三上に出会った彼ら3人特に、スーパーの店長や(自分の偏見からの過ちを認め、そこから三上を表面ではなく心をみた。ときには三上と言い争いになり激しく罵られても、彼の事を避けずに彼の事をしっかり考えて優しく接していた)青年の心が変わっていく姿(最初は中途半端、、だったが、三上を知り彼と心で接したことによりで作家になる三上の半生をモノとして書くと決め、真っ直ぐな雰囲気になった)
彼らの姿は人と接する上で1番大切なことが詰まっているようだった。
どんなにイラっとしたり、嫌だな、変だなと思っても相手の心が見えるまで我慢したいそう思った。


三上を演じた役所広司は演技を超えて完全に三上本人として存在していた。


寛容さにはリスクや身の危険、それに漬け込む者もいるだろう。
ただ、相手の表面だけではなく
“心”をみるということはできることではなかろうか。
そんな事を誰に対してでもできる社会になっていけば、自然と寛容さは生まれていき、きっと素晴らしき世界は実現できるだろう。
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