【嘘のような世界、現実の世界】
いろいろなレトリックを散りばめて、嘘なのか現実なのか、曖昧な世界をコラージュのように綴っていく。
(郵便配達)は、嘘のようなポエムの世界と、暴力と死が溢れる現実の世界を繋ぐ。
空想が支配するポエムの世界。
しかし、生きているという実感はあるのだろうか。
(月夜の星)に広がる疑問。
暴力や欺瞞が溢れ、人の命が軽い世界。
現実かもしれないが、実感の湧かない世界。
でも、それは僕達の周りの世界。
(月夜の星)がホテルのベッドの上で言う、
「ここはどこ?」
そう、ここは夢かもしれない現実。
(月夜の星)は(郵便配達)とのセックスの快楽を通じて、どんどん現実に引き戻されて行く。
しかし、決して(ペンギン)は、現実の世界に来ることは出来ない。
(ペンギン)は自ら現実の世界に足を踏み入れようとするが、無理なのだ。
不能だからだろうか。
とどまる(ペンギン)
戻って行く(月夜の星)
変わらぬ(郵便配達)
(郵便配達)は、(月夜の星)の背中に何を見たのだろうか。
そう、(郵便配達)が人の背中に描く世界は、現実の世界ではない。
(郵便配達)は夢の世界から人を現実に引き戻せるが、自らはとどまることしかできないのだ。
家族を遠くに離しても、(郵便配達)は、人の背中に描く世界を想いながら、とどまるしかない。
これは全部、実は、僕達の世界に重なる。
ファンシーとは、装飾的とか、空想とか、幻想という意味だ。
でも、やはり、このストーリーは、ひどく僕達の世界に重なる。