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花束みたいな恋をしたのhatthiのレビュー・感想・評価

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
4.7

私はこの映画を観て
「もしかしてこれは私の物語?!」
という不思議な感覚に陥った。

いや、そんな訳はない。
私は5年も誰かと付き合ったこともないし、こんな経験をしたこともないけど、これは間違いなく「私の物語」だった。正しく言い直すと、私だけではなく、「観た人に自分自身の物語と感じさせる力を持った映画」だった。

多分、この先、このような経験をするたび、私はこの映画を思い出すんだろうなあ。
そんな気持ちになって、

映画を観終わった後、
人と感想を共有したいけれど、
今は、少しの間だけは、
心にしまったまま余韻に浸ろうと、
コンビニで350mlの缶ビール買って、
きのこ帝国の「クロノスタシス」を聞きながら
歩いて帰りたくなるような映画だった。


もし、2021年のことをこの映画のシナリオに数年前のことのように落とし込むとしたら、

「あぁ、居たな。
インスタのストーリーで
clubhouse始めましたwって人、
裏で招待してもらうのに必死だったのに
それは隠して、ヒエラルキーを振りかざす人。
なんとなくそういう人に限って
今は何をしているのか分からない」

というセリフを絹ちゃんに言わせるんだろうな。
と考えてしまうくらい、その時その時に心の底で思っていたような事がそのままセリフになっていて、
なんで坂元さんはこの感情を知ってるの?
この空気を知ってるの?
この知識があるの?
と私が言うことでもないけどシナリオの作り込みの上手さに感動して土俵にも立ててないのに悔しかった!
良い表現見る度悔しい気持ちになった。
私の書くシナリオはだいたい2年〜5年の長い期間の物語ばっかりだから、それの構成の正解を見せられたみたいで、これ使おう、これ応用できそうって永遠にメモしてた。モノローグで進む中にも台詞でも大事なこと言わせててやっぱりプロは凄いなと悔しかった!絶対卒制で使う!!
モノローグで展開させる構成もだけど台詞が本当に良い!そんな美しい言葉どこから出てくるの?ってもう悔しいことしか出てこない!

その中でも印象に残ったものを書き出してみました。

「トイレットペーパー」
トイレットペーパーが良い働きをするんだよなあ、改札での出会いのため、すねた怒った彼女を引き止めるため、雨を避けるため、次会うきっかけのため、、上手いなあ、ただ持つだけなら違うものでも1つでも良いのに2つ持たせるところ、そして持ちにくいトイレットペーパーなところが上手すぎる!

「ショーシャンクの空に」
映画が自称詳しい男がこの映画をあげた瞬間爆笑しそうになった笑笑笑笑いや本当にそうなんだよ!自称の奴に限ってこれかレオンかグリーンマイルなんよ!坂元さん良いところ突いててめちゃくちゃ共感した笑笑笑笑あと女があげた実写版魔女の宅急便も。ああいう人がたくさん居るからこの世に実写版が増えてるんだよといったことを実写版をやりまくってる菅田将暉に言わせてる坂元さんは強いと思った!笑笑笑笑

「余韻の浸り方」
分かる!余韻に浸りたくて私もそれしたわ!ってなった!中2の私は激しくそんな感じだった。イチと遊ぶたび余韻に浸って、私にとって花束みたいな恋はこれだと思うけど花束ほどの花はなかったなあ。

「写真」
写真を撮るのって本当に楽しかったり本当に愛おしい時でないと撮らないんだよね。私も楽しさとほぼ比例して愛おしさとほぼ比例して写真撮ってると思う。だから高3大1は写真がめちゃくちゃ多い。それを上手く使って後半写真の描写が少ないのが鳥肌!

「さわやか」
分かる!さわやかのハンバーグじゃなくても一緒にしようって誰かとしていた約束を勝手に知らないところでされるのは嫌な気持ちになる。だけどそれは言葉に出すほどの嫌なことでは無いから忘れてたけど坂元さん、そこもすくい上げるのね?ずるい!(素晴らしいです)

「始まりは終わりの始まり」
私も何事においても始まるタイミングで終わりも考えちゃうから、終わりに囚われてしまうのがすごく分かる。始まっても終わりを考えないで突っ走れる人って本当になんなの?(羨ましい)

「長い帰り道」
帰り道って大切で私は高校中学の帰り道の会話がすごく好きだった。夢の話したり恋バナしたりウザイ人の話したり、、特に援団の帰り道。二度と味わえないんだろうこのエモさはと刻みつけてた時もあったなあ。

「そいつは今村夏子の「ピクニック」を読んでも感動しない」
分かる!なんか腹立つことされたり、理不尽なことがあるとあの人なんてこの映画観てもなんとも思わないんだろうな。私はそんな感情の無い人間には成り下がらないぞと何回思ったか。

「読む本の変化」
私は変わってないのに相手が変わっていることに気づくとなんだか私だけ置いていかれた気持ちになるのを上手く表現していてうわあってなった。

「言い方」
言い方一つで人は変わるのにお互い絶対にダメな言い方発言をするのめちゃくちゃ分かるな。ボタンがかけ違ってきてるのは2人とも感じてるのに俯瞰して見れないからゆえの言い方をしていて苦しかった。

「終わるから良い恋」
私は終わるから美があるんだと思うからすごくいい終わり方だった。この2人は大学生のうちに付き合わないまま就職してそれから付き合ってたら結婚してたんだろうね、タイミングってすごく大事なんだね

他にも色々節々に感じることが多かったけれど、とにかくこの映画以上にそれぞれがそれぞれの思い出を投影しながら観れる映画は無いと思う。
最高でした!


私にとっても花束みたいな恋はあった。
いや、花束では無い、
花束にならないほどの思い出しか無いうえ、花も1輪ほどしかないので、
優里に頼んでさっさとドライフラワーにしてもらいます。
声も〜顔も〜不器用なとこも〜
hatthi

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