塩

花束みたいな恋をしたの塩のレビュー・感想・評価

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
4.8
破局ものと分かっていて尚、この清々しさで幕を閉じる作品は素敵。
正直かなり期待して先にノベライズを読んだ結果、こんなもんかと思った。切なさもあまりなく涙なんか一滴も出なかったのに。
映像として表現されるとここまで切ないか、と。役者の表情ひとつの演技から、小説でくどい程ある説明は上手く映像で映していたし、音楽も良かった。
やっぱり元々映画の脚本として描かれたものは映像化してこそなんだろう。

あるある、なんてものじゃなく、この景色をわたしも見た、が一番近い感想。
学生からフリーターやって就職して。全く同じなんかじゃないけど、似たような道で出会って恋をしたわたしはまさしく世代的にもドンピシャで。麦くんみたいにときめいてた物に何も感じなくなっちゃったり、それが出来る相手を羨ましくなったり。絹ちゃんみたいに思い出のものを蔑ろにされて傷ついたり、向き合おうとした時には手遅れだったり。
でもお互い傷つけようとなんかしてないのに、どうしたってぶつかる感じとか。
別れ方が分からないけど、いざ決意すると昔みたいに楽しい瞬間がきて。だから別れると決める絹ちゃんと、やっぱり別れなくていいと言う麦くん。この感じも妙にリアルだよなぁ。
でも破局ものによくある胸糞悪いシーンなんてないし、別れた後だって清々しくて、美しい。劇場を後にした人が切なくも前を向ける作品でとても好きだった。
いま恋人がいる人はきっともっと大切にしたくなるって宣伝がピッタリだった。
何度も頭をよぎったけれど、結局傍にいたくて離したくない大好きな恋人を大事にしようと思った。そしてそれを思わず伝えてしまった。新年最初にやっと劇場で観れた作品がこれで、本当に良かった。
塩