Hinami

花束みたいな恋をしたのHinamiのネタバレレビュー・内容・結末

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

「花束みたいな恋をした」
美しい花束もいつかは枯れてしまう。
けれど枯れてしまっても尚、貰った時の一輪一輪の美しさは忘れることなく思い出として心に残り続ける。
まさに2人の5年間を表すタイトルだと思う。

共通の趣味から意気投合し、3回目のデートで交際を始める。次第に同棲を始め、お互い少ない収入で幸せな生活を送る。目標は2人の幸せな暮らしの現状維持。
最寄りから30分、コーヒー片手に帰る2人の時間、老夫婦が営むお気に入りのパン屋さん、一緒に見た映画や漫画。上映開始1時間はそんなありふれた日常があったかくて幸せでたまらなかった。
しかし、社会人になり環境が変わったことでお互いの生活リズムや価値観がずれ始め、心の距離が少しずつ広がっていく。
仕事を頑張るのは大切。だけど頑張る理由は一緒に幸せな生活を送るためにお金を稼ぐだったはずなのに、いつの間にか2人であれだけ同じ事をして共有していた時間は無くなり、仕事ばっかりになってしまう麦くんと変わってしまった麦くんに我慢し続ける絹ちゃんを観てて胸が苦しかった。
生活していく上で実際にお金は大切。手に入れるにはそれなりの犠牲も出てくる。好きな時に好きなことをしてたゆるゆる生活な大学生から社会人になったばかりの2人には環境が360度変わって、両立なんて難しいに決まってる。麦くんだって、本来絹ちゃんとの生活のために働いていたわけだから故意ではないし、誰も悪くない。なんとも言い難い難しさがある。
私が2人の立場だったら、どうしてたかなぁ。
それからお互いの気持ちが再び重なり合うことはなく時は過ぎる。最後はお互いの幸せを願って笑顔で別れようと決めていたが、行きつけのファミレスで5年前の自分たちを彷彿とさせる若者達に出会う。失ってしまった感情と当時の記憶が蘇り、互いに号泣するシーンが印象的だった。
ハッピーエンドではないけど、ほっこりとした不思議な感覚。

ちょっとした事の積み重ねがすれ違いや別れに繋がる。どれだけ時間が合わなくても1日1分でもいい、時間を作ること。当たり前を当たり前だと思わず、相手を思いやる心が必要不可欠だということ。初心忘るべからず、この映画を見てとても大切だと学んだ。
どこにでもあるような、ありふれた恋人達の日常。
等身大だからこそ共感を呼び、観ている人々の心に入り込むんだろうな。
私も花束みたいな恋をしたい、そんな風に思わせてくれた作品。
Hinami

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