「自分のために作られたとしか思えない映画」は数あれど、今回は僕の中で完全に異質だった。
そもそも「僕のための映画」とは主人公の行動原理に心底共感できる作品のことだったんだけど、今作は「僕のかつて見ていた景色」をそのままに描写していて、終始冷静に見られなかった。
有村架純はすごくかわいらしくてとても自然な演技をしていたけど、僕にとっては「あの時のあの人」を再び見せるための媒体でしかなかった。
明大前のつぼ八で話し合ったあと、甲州街道沿いを缶ビール片手に歩いた、あの経験を生々しく思い出させる映画を見て、心が揺さぶられないわけがない。
そこまで行きたくもない東京国立博物館でちょっと無理してデートしたあの感覚もすっかり忘れていた。
駅から30分歩いて帰るあの家とその道のりが本当に好きだった(正確には27分くらいだったけど)。
まさに「実写版僕」だったから、他の人にも相当の人気があることがにわかには理解できない。
「好きかどうかが、会ってない時に考えている時間の長さで決まるなら」、本当に厄介な映画を見たものだ。
こんなもん見ちゃったらどうしたって考えてしまう。