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カモン カモンのYKのネタバレレビュー・内容・結末

カモン カモン(2021年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

最近、新作でもモノクロの映画が多い。アカデミー賞脚本賞を受賞した『ベルファスト』をはじめ、『GUNDA』『パリ13区』『ライトハウス』(本作と同じA24製作)などが記憶に新しい。モノクロの利点はいくつかあるが、今回それを採用した理由について監督は、「すごくありきたりのこと」を描いた本作を「日常から切り離して、“物語”の中へ導くため」と話している。確かにこの映画は、日常の会話、食事、入浴、睡眠などを映したシーンが多い。そんな身近な風景も、モノクロにすることで普段より尊く見えたり、印象的に感じられたりする。

この映画は、子どもの世界(意見)と大人の世界(意見)というものを、叔父と甥という2人の共同生活を通して描いた物語だ。「子どもの世界」を描いているという点では、『星の王子さま』や『みどりのゆび』といった優れた児童文学での、子どもたちの素直な感情、世界への意見、好奇心にも共通する。ホアキン・フェニックス演じる叔父のジョニーは、仕事ができて人当たりもいい頼れるおっさんだ。しかし甥っ子のジェシーを前にすると、その予測不能な行動やきわどい質問にとまどい、時に苛立ちを見せてしまう。ぶつかり合う2つの世界だったが、今回は偶然にも2人とも物分かりがいいので、次第に理解し合えるようになっていく(ここが若干理想主義的)。ただ監督が語っているように、「好奇心」というものがキーワードになっているのは間違いない。「君の話を聞かせて」、「大丈夫じゃなくても、大丈夫」、「大人も子供もどっちもどっち」という3つのキャッチコピーは、大人から子どもへのメッセージというだけでなく、子どもから大人へのメッセージでもあるということに最後で気づく。

逆に言えば、子育て経験がない・身近に小さい子どもがいない人や、ジョニーやジェシーの母親と共通する部分がない人には、入り込めるポイントが少ないかもしれない。自分のような、子世代でも親世代でもない人物の視点があると奥行きが出たかも?と思う(実はそういうキャラクターが用意されてはいるが、効果がいまひとつだった)。
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