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カモン カモンのRKのレビュー・感想・評価

カモン カモン(2021年製作の映画)
4.5
単に、
『無垢な少年によって、純粋な心を取り戻す大人の話』
に終始してなくて良かった。

きちんと少年の葛藤&成長の物語としても描けていて、
あぁやはり、人間関係というのはどうしたって相乗効果(良い意味でも悪い意味でも)だよなぁ、と感じられた。

【良いところ↓】
■録音機持ってウロウロするジェシーの画力
■ジェシーがジョニーの唇もってぶあぶあぶあと悪戯するところ
■叔父と甥っ子の、あまりにもあけすけな会話による、「教育とはなんぞや」と考えさせられるところ。(子供との関係が行き詰まると、それを正直に彼らに白状する。彼らを一人の人間として尊重しているからこそだ。教育とは、大人→子供、という一方通行ではないんだ!)
■親がいない子供、子供がいない親、のロールプレイング。ドライブマイカーでもそうだったが、人は演技を介すことによって、現状からメタ視点を取り入れることができ、快方へと向かう。それが上手く描けていた。
■言語的な映画であるゆえ、モノクロにすることで余計な情緒を削る、という英断。ドラマティックな演出も極力排されていた。
■子供たちへのインタビューを挿入し続けることで、ジョニーとジェシーが、大人→子供という関係性にならぬよう、ある種の監視役になっていたところ。

【むむ、と感じたところ↓】
■兄妹の仲が、あまりにも急速に暖められたところ。契機がなさすぎやしないか?絶縁した後、一年連絡を取っていない関係性にはまるで感じられなかった。ジェシーと交流することで、だんだんと二人の関係性も良くなる、という筋書きにすれば良かったのに。最初からバディーとして成立してしまっていた。
■既存文献のインサートシーン。あんまりり機能していないように感じた。言語的に高級感を持たせようという見えすいた意図を感じてしまった。
■ポールがどういう父親だったのか、の描写不足。ジェシーからは、終始母親の影しか感じられなかった。ポールはいったいどういう人間で、ジェシーはどういうところを尊敬し、また嫌悪しているのか、ほぼ言及がなかったかのように思う。感情のコントロールができない天才肌の男、くらいだったような…。ジョニーが擬似父として君臨するのであれば、二人(ポールとジョニー)はどこが違くて、どこが似てて、どう影響し合うのか、が重要なのでは?穴を埋められるところと埋められないところがあるはずで、それこそが肝だったのではないかしら…。
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