KylieMia

カモン カモンのKylieMiaのレビュー・感想・評価

カモン カモン(2021年製作の映画)
3.8
リアルでありながらも温かく深みのある作品。
作品は全編モノクロであるが、街や自然の雰囲気が伝わってくると同時に作中でも重要になる「音」や登場人物たちの表情など色がないことにより逆にそれ以外の内容に集中できる。あえて音楽を入れないのもそのためなのかもと思った。
主人公ジョニーとジェシーやヴィヴのやり取りなどはまるで日常を見ているようなほど自然でありながら、平凡な中でも葛藤や喜びがあることを鮮明に描いている。
また子供たちにインタビューしている映像や音声が度々流れるが、これらはすべて実際にインタビューを行ったものであり、子供たちの言葉はとても深く的を得ており本当に台詞はないのか?と思ってしまうほど堂々と毅然とした態度で皆それぞれの想いを語っていた。
ジェシーは独創的な考えの持ち主でありつつも、子供と接する上で多くの人が経験するような子供なりの表現方法も持っている。
ジョニーも悪戦苦闘するが、ヴィヴのアドバイスや自分自身の中で色々考え関係を築いていく。彼は壁にぶつかっても投げ出さず向かい合うこと、素直に気持ちを伝えることの大事さを教えてくれる。
ジェシーも上手く伝えきれない部分があるが、ジョニーと接していくうちに感情の表現方法を見つけて成長していく姿が愛おしい。
ホアキン・フェニックスの飾らない自然な演技と彼の優しさが滲み出るような役柄だったと思う。
そしてジェシー役のウディ・ノーマンの演技が複雑なジェシーの心情をうまく表現しつつも、目をキラキラさせたりまっすぐ見つけたり色んな側面を引き出していて圧巻だった。
また個人的に母親役のギャビー・ホフマンの演技も好きだった。少し色んな問題を抱えて疲れつつも、強く優しく懸命に過ごすヴィヴを見せてくれた。

個人的な話になるが、ジェシーの姿と自分の幼い頃を重ねずにはいられなかった。私もジェシーくらい「ぶっ飛んだ」アイデアの持ち主で周りに合わなかったり、呆れられることがしょっちゅうだった。私の母もヴィヴみたいに悩んだり疲れたりしながらも、付き合ってくれたのかなと思った。
(あとこの作品を先に観ていた人に、ウディ・ノーマンの顔に似てると言われたのでそれもあって勝手に親近感を抱いていたのかもしれない…)

シンプルながらも深みのある、見終わった後に優しい気持ちなれる映画だった。
KylieMia

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