社会は残酷にあふれている。
しかし自分に関係がないと思い込んでいる残酷さについて、人はおどろくほどに鈍感だ。気付かないこともあれば、そういうものだと決めつけて思考停止になっていることもある。
また、本質を理解していないくせにわかったふりをする残酷さもある。そうして社会は、無理なことでもまかり通っているのだ。
ナギサはイチカがショーパブの舞台で踊りだす姿をみて、自分が望んでも一生手に入らないものを、彼女が生まれながらにして持ち合わせていることを理解する。
残酷さは絶望を生むものだが、彼女の強さが、絶望から母性を呼び起こし、人間愛へと昇華させたのだろう。
育てることでアイデンティティーが確立される。
人は絶望するからこそ、同じように希望も持てるのだと信じたい。