しん

ミッドナイトスワンのしんのレビュー・感想・評価

ミッドナイトスワン(2020年製作の映画)
3.9
「成長」という言葉は、しばしば「良くなる」、「強くなる」といったプラス方向の言葉として使われます。
その意味で「成長」したのは、本作では1人しかいないでしょう。
ただ、成長という言葉を「成りたくても成れない理想像を追いかけ」、「むき出しの暴力をふるってくる社会に抗い」、「絶望を繰り返し」ながら明日に進んでいくことだとするなら、本作のすべてのキャラクターは成長しています。そして、すべてのキャラクターに「成長したね」と優しく声をかけてあげたくなる、そんな作品です。

「商品になるな」という叫び声と、商品にならなければならない現実が交錯するとき、「折り合いをつけながら、心の火は絶やさずに、お前も成長していけよ」と優しくも強いメッセージが込められた映画でした。

帰り道のイルミネーションが、いつもよりぼんやりと儚げに、でも煌々と照っているように見えました。

家に帰ったら、平野啓一郎の『私とは何か』を引っ張り出して読もうかな。
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