harunoma

ファーストラヴのharunomaのレビュー・感想・評価

ファーストラヴ(2021年製作の映画)
1.1
作り手には二種類の人間がいる。
一つは、ふざける才能があって、ギャグをギャグとして映画を駆動し得るかも知れないと意識的なセンスの人間。
もう一つは、何も考えずに適当に作り、努力と称して結果的に歴史を逆撫でするくらいにふざけた映画・映像として倫理の選択のない天然の、いわゆる大馬鹿野郎。

後者は、NHK版の『ファーストラヴ』のドラマであり、これは見ていられないほどひどい(真木よう子、上白石萌歌が出ていたとしても。黒木瞳が一番ギャグだった)
前者は、褒めれば堤幸彦だが、近作のシリアスサスペンス現代日本映画路線への転向は、やっぱり馬鹿だと思う。もう一度奇跡的に面白くはあった『溺れる魚』のでたらめな軽さが必要である。

まず島本理生の『ファーストラヴ』というタイトルからしてふざけている。
原作からして少女漫画のわたしのトラウマ見て見てオーラが強く、トラウマを語るべきものとして特別視し、それを顕示することを愛している、あるいは説話上明かされるべき秘密としてコアに持ってくるのは、映画ならジーン・セバーグくらい頑張らないと成立しないし、ジェンダー的にも女の方が自らマッチョになっているような「このような私を」見て見て、という、さもしい心根は、はっきりと鬱陶しい。一人でやってくれと。
気の狂った演技を頑張る芳根京子の見事な努力が寒々しく、押し付けがましい演技と演出がクリシェの狂気として広告化していく。ジーナ・ローランズを見直そう。
とんでもない窪塚洋介は無駄遣いであるし。

劇場で観なくてよかった。
harunoma

harunoma