スリリング。
ヒューマンミステリーの傑作。
あたかも天秤のように、
観る者の価値観をグラグラ傾かせる作品でした。
滝内公美さん、素敵でしたね。
迫力ありました。
主人公の由宇子(瀧内公美)は、小さな制作会社のドキュメンタリー監督。
強い意志と信念を持つ魅力的な女性です。
倫理を求められるジャーナリストであり、学習塾の教育者という立場の人物でもあります。
ただ、目的のためには手段を選ばない手を打てる人としても描かれます。
由宇子は、3年前の女子高生いじめ自殺事件を追い、ドキュメンタリー作品として仕上げようとしていました。
「女子高生は担任と性的関係あり、それでいじめられた」
「報道被害にあった担任も、追って自殺した」というストーリーで報道されていました。
ステレオタイプのお話におさめようとするTV局制作部に抗いつつ、主人公は関係者に話を聞いていきます。
時に演出をまじえながらも、関係者の心のひだにふれ、真実を深掘りしていきます。
インタビューを重ねるなか、
従来の筋は揺らぎ、違う側面が表れます。
さらに、女子高生と担任教諭の家族それぞれが、中傷に晒され、生き地獄のような生活をおくっていることを知ります。
事件の真相に、由宇子はどんどん迫っていくように観客にはみえました。
そんな時、主人公の父親が経営する学習塾で事件が起こります。
由宇子の父親が、塾の女子生徒を妊娠させていたという、今追っている事件と相似形の図。
由宇子は、父親を守るべきか、女子生徒に寄り添うべきか、ユラユラ天秤を揺らしながら両者に関わっていきます。
仮に父親の事件が公になったら、自分達だけでなく、作品や作品に携わるスタッフにも大きな影響が出てしまう。
そんななか、塾の男子の話から、件の女子生徒に対する疑念がもたげます。
主人公の信念は、また揺らぎます。
〔観客は、主人公を応援したいけれど、主人公の罪にも加担しているような気になってしまう〕
追い詰められた果てに、主人公が下した決断とは…
緊張のなか、たどり着いたこの映画の結末は…