しらすごはん

由宇子の天秤のしらすごはんのレビュー・感想・評価

由宇子の天秤(2020年製作の映画)
4.2

スリリング。

ヒューマンミステリーの傑作。

あたかも天秤のように、
観る者の価値観をグラグラ傾かせる作品でした。

滝内公美さん、素敵でしたね。

迫力ありました。


主人公の由宇子(瀧内公美)は、小さな制作会社のドキュメンタリー監督。

強い意志と信念を持つ魅力的な女性です。

倫理を求められるジャーナリストであり、学習塾の教育者という立場の人物でもあります。

ただ、目的のためには手段を選ばない手を打てる人としても描かれます。


由宇子は、3年前の女子高生いじめ自殺事件を追い、ドキュメンタリー作品として仕上げようとしていました。

「女子高生は担任と性的関係あり、それでいじめられた」

「報道被害にあった担任も、追って自殺した」というストーリーで報道されていました。

ステレオタイプのお話におさめようとするTV局制作部に抗いつつ、主人公は関係者に話を聞いていきます。

時に演出をまじえながらも、関係者の心のひだにふれ、真実を深掘りしていきます。

インタビューを重ねるなか、
従来の筋は揺らぎ、違う側面が表れます。

さらに、女子高生と担任教諭の家族それぞれが、中傷に晒され、生き地獄のような生活をおくっていることを知ります。

事件の真相に、由宇子はどんどん迫っていくように観客にはみえました。

そんな時、主人公の父親が経営する学習塾で事件が起こります。

由宇子の父親が、塾の女子生徒を妊娠させていたという、今追っている事件と相似形の図。

由宇子は、父親を守るべきか、女子生徒に寄り添うべきか、ユラユラ天秤を揺らしながら両者に関わっていきます。

仮に父親の事件が公になったら、自分達だけでなく、作品や作品に携わるスタッフにも大きな影響が出てしまう。

そんななか、塾の男子の話から、件の女子生徒に対する疑念がもたげます。

主人公の信念は、また揺らぎます。

〔観客は、主人公を応援したいけれど、主人公の罪にも加担しているような気になってしまう〕

追い詰められた果てに、主人公が下した決断とは…

緊張のなか、たどり着いたこの映画の結末は…
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