つるみん

藁にもすがる獣たちのつるみんのレビュー・感想・評価

藁にもすがる獣たち(2018年製作の映画)
4.0
【ラッキーストライク】

原作は曽根圭介による同名の犯罪小説。

大金を目の前にして戸惑う事なく自身の悪事を正当化し、次第に獣になっていく様を描いた、謂わばマネードラッグムービー。そこに韓国特有のサスペンスとグロ要素が加わり、バイオレンスとコミカルの緩急が魅力的な映画だった。

また本作の面白い点は8人の群像劇である事。タイミング良くそれぞれの場面に繋がる構成は群像劇として完成度が高く、非常に評価できる。ベースとなるのはブラックコメディであるが、後半につれ韓国らしさ全開で、物語の展開もスピードアップしていく様はやはり観ていて迫力がある。ジェットコースタームービーという程の振れ幅はないが、次の展開がどうなっていくのか全く予想もつかないストーリーは最後まで飽きさせない。

『悪のクロニクル』『犯罪都市』『悪人伝』などを制作したBAエンターテイメントが本作の制作プロダクションを担当しているだけあって、暗い雰囲気の中で彷徨い、焦る人間の性を全面に映した内容は今回も健在。

ただ本物の悪が居ないという点においては映画としてインパクトが足りないか。しかし明らかに本作では、登場人物たちが卑劣に見え過ぎないように見せてくる絶妙な共感を煽る感情のコントロールをしているのが評価できる点でもある為、難しいところ。

キャストはチョン・ウソン、チョン・ドヨン、ペ・ソンウ、チョン・マンシクなどの実力派が揃いに揃っている。

監督・脚本は本作で長編デビューを飾ったキム・ヨンフン。短編やドキュメンタリーが主な活動であったらしいが、これからが楽しみな監督さんとなった。なかなか技巧派な監督さんである。

面白かった!
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