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tick, tick...BOOM!:チック、チック…ブーン!のmaichanのレビュー・感想・評価

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ジョナサン・ラーソンの「RENT」が大好きで、映画版はもちろん、ブロードウェイキャスト来日版、日本人キャスト版も観に行った。(ちなみにネタ元になったオペラのラ・ボエームも大好き。)
観る度に水分が体から無くなるかというほど涙が搾り取られる。

それだけ思い入れもあるので、この映画もネトフリ配信だが、劇場で観られるので観に行ってしまった。
ジョナサンを想い、やはり涙が搾り取られた。

ジョナサン自身の主演のTick, Tick... Boom!のステージと、そこで歌われるドラマが実際の様子として描かれる入れ子構造。
Tick, Tick... Boom!であり、ジョナサンの半生を描いた伝記映画にもなる巧みな構成だった。
場面によってはステージとドラマを行ったり来たりするせわしなさが、ジョナサンの焦燥感を表現するのにピッタリ。

監督のリン=マニュエル・ミランダは舞台でTick, Tick... Boom!のジョナサン役をやっているので、作品と役について誰よりも理解しているし、ブロードウェイミュージカルの作演出家として、同じような経験をしてきたはずで、まさにこの作品の監督に相応しい人だ。自作の「イン・ザ・ハイツ」の監督は人に任せ、こちらを選んだことからもそれを感じる。

アンドリュー・ガーフィールドはRENTファンならば一度は目にしたことがあるであろう、ジョナサンの生前のバイト中の映像そのままの姿で現れ、それだけで涙が込み上げてきた。
顔立ちは似ていないが、人懐っこそうな表情はまさにジョナサン・ラーソンだった。
ミュージカルは初めてらしいが、ミュージカル畑の共演者に負けず劣らず。
すごく歌唱力があるというほどではないが、等身大の心や感情が伝わってくる歌唱だった。

ジョナサン・ラーソンは映画で描かれる数年後に早逝してしまう。それを分かって観るがゆえに死が常にそこにある。
「メメントモリ死を忘れるな」今を精一杯生きよう。そしてRENTのナンバー、Seasons Of Loveのかけがえのない一瞬一瞬を大切に生きよう、というメッセージも思い出された。



スティーブン・ソンドハイムが亡くなった後に観ることになったのはなんてタイミングだろうか。
劇中ジョナサンは自作をソンドハイムに評価されたことを糧に何年も頑張っている。
実際にも交流が深かったようだ。
ソンドハイムの役は別の俳優がやってたが、
留守番電話の声は本人がセリフも作って、吹き込んでくれたそうだ。
改めてミュージカルの巨人スティーブン・ソンドハイムのご冥福をお祈りします。

ソンドハイムの名作ミュージカルSunday in the Park with Georgeの劇場中継をテレビで観るシーンがあり、そこからジョナサンが妄想したという設定であろうSunday in the Park with Georgeのオマージュナンバーがある。タイトルも同じ「Sunday」。

そこではブロードウェイのレジェンド名優の方々が出演されていた。自分が分かっただけでもチタ・リヴェラ、ジョエル・グレイ、バーナデット・ピータース、べべ・ニューワース、ブライアン・ストークス・ミッチェルがいた。
ミランダ監督の大ヒットミュージカル「ハミルトン」のキャストも出てたようだ。
それからRENTのオリジナルブロードウェイキャストのアダム・パスカル、ダフネ・ルーヴィン・ヴェガ、ウィルソン・ジャメイン・ヘレディアが出てた!!
ロジャー!ミミ!エンジェル!ーー!
ここは涙腺が大崩壊!
ソンドハイムだけでなくブロードウェイへのリスペクト、愛を感じるナンバーであった。


Sunday in the Park with Georgeはフランスの点描の画家ジョルジュ・スーラについてのミュージカル。
スーラは大傑作「グランジャット島の日曜の午後」を残して31才で病気で早逝した。
(山田五郎さん曰く、スーラは点打ち過ぎて早死にした。)

35才で「RENT」を残して亡くなったジョナサン・ラーソンに通じるものがある。ジョナサンが「Sunday」を作ったことにより、自分の運命を予感したような事になってしまったのか…。
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