sakura

tick, tick...BOOM!:チック、チック…ブーン!のsakuraのレビュー・感想・評価

4.1
天才じゃないわたしたち


“ジョナサン・ラーソンの自伝”と思いながら観ることを許されない。わたしの物語だ。

きっと、子どもを持っていなくて東京に出ていたら、より一層共感できただろうと思う。
一度踏み入れてしまったら、引くに引けない街、東京とかニューヨークってそういうところだと思う。


芸術・クリエイティブとされる、作曲・絵画・写真・執筆とかって、質を問わなければ基本的に誰にでもできるもの。
だからこそそのレベルには機微があって、正解がないからこそ難しい。自分の「良し」が、他者の「良し」とは限らないから難しい。
誰にでもできるけれど、「業にして食べていくことができる」という段階に到達するのは難しい。

好きなアーティストや作家はじめ、それができている人たちは本当にすごいことだと改めて思った。
あまりに当たり前に期待してしまっていることにも気づいた。
だってもう、彼ならこの頻度でこのクオリティの曲を作れると思ってしまっている。彼女なら次作も絶対裏切らないと思ってしまっている。
わたしなんかが言うまでもないけど、すごいことなんだな。


“業にしたいこと”がある人には全員観てほしい。
誰にも見られない作品を作り続ける、自分の作品より駄作に思えるものが当たり前に市場に転がっている。
そんなことに耐えられなくなったとき、何度でも見返したい。
いくつもの大切なものを犠牲にして、選んで、追った夢だもの。
わたしが捨ててしまったら、犠牲にしたものたちが可哀想だ。
sakura

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