SANKOU

tick, tick...BOOM!:チック、チック…ブーン!のSANKOUのネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます

有名なミュージカル作品『レント』の作曲家であるジョナサン・ラーソン。この映画は彼の自伝的ミュージカルである「チック、チック…ブーン!」の舞台と並行しながら、夢を追い続けたジョンの人生を描いている。
30歳を目前にしてジョンは焦っていた。ウェイターの仕事をしながらミュージカル作家を目指している彼には、まだ舞台化された作品も世に認められた楽曲もなかった。
友人のマイケルは役者の道を諦め、広告会社に勤めた結果、高層マンションに住むブルジョワな暮らしを手に入れた。
恋人のスーザンは芸術家として活動を拡げるためにニューヨークへ移住しようとしており、ジョンにもついてきて欲しいと願っていた。
ジョンには今構想している前衛的なミュージカルの試聴会が控えており、それが終わるまでは彼女に返事を待って欲しいと告げていた。
彼はまだ夢を諦めることが出来ない。しかし『スーパービア』と名付けたミュージカル作品の要となる最後の楽曲がまだ出来上がらない。
夢に生きるジョンは、現実的な生き方を選んだマイケルと衝突してしまう。そして心の支えだったスーザンからもついに別れを告げられてしまう。
最後の楽曲は完成したものの、一番聴いてもらいたかったスーザンは席にいない。
しかしジョンの脳裏にはその楽曲を歌うスーザンの姿がはっきりと映っていた。
試聴会でこの楽曲を歌うカレッサとスーザンの姿が重なる演出は見事だった。
批評家からも絶賛を浴びた『スーパービア』だったが、ブロードウェイどころかオフブロードウェイからも上演の声はかからなかった。
ジョンのエージェントは作家は書き続けるしかないのだと彼を諭す。
そして次はもっと身近なものをテーマにすべきだとアドバイスをする。
夢を諦めかけたジョンを励ますマイケルだが、彼はエイズに感染してしまったことを告白する。
1990年のアメリカではエイズが流行しており、ジョンの周りでも親しい友人がまだ若くして命を落としていた。
そう遠くない未来にマイケルもこの世を去る時が来る。
この経験が『レント』に与えた影響は大きいと思った。
夢は人生を食い尽くすという台詞が劇中にあったが、まさにジョンの人生は夢を追い続け、夢に食い尽くされた人生だったと思う。
彼は『レント』の初日を観ることなく、急病でこの世を去った。
『チック、チック…ブーン!』のミュージカルシーンがあるおかげで、大分シリアスなシーンが和らいでいたと思う。
音楽ひとつで世界はガラリと変わる。
正直あまりピンと来ない楽曲もあったが、全体的にはとても面白い世界観だと思った。
中盤からギアがかかってからは、グイグイと画面に引き込まれた。
ジョン役のアンドリュー・ガーフィールドは適役だと思った。
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