Omizu

未来を写した子どもたちのOmizuのレビュー・感想・評価

未来を写した子どもたち(2004年製作の映画)
3.7
【第77回アカデミー賞 長編ドキュメンタリー映画賞受賞】
インド系イギリス人ザナ・ブリスキとロス・カウフマンが共同で監督したドキュメンタリー映画。サンダンス映画祭で絶賛され、その年のドキュメンタリー映画賞を総ナメにした。

インドの売春街で彼らを撮影している写真家ザナは地元の子どもたちに向けて写真教室を開いている。赤線地帯で暮らす子どもたちにカメラを与え、ありのままの写真を撮ってもらい指導する一方、彼らをこの現状から救い出そうと手を尽くす。

台本はあるんだろうけど、親が水商売に従事する現場を日常的に見ているからか非常に大人びているのが印象的。

少し太めの少年アヴィジットは本当に才能がある。この作品の中でもインド代表としてアムステルダムに招待されるほどだが、写真も絵も異次元に上手い。

写真を撮ることを通してインドを鋭く批評している。売春の実態やカースト制度、公的手続きの怠慢や教育の不寛容。

カーストは高い方なのに売春に従事させられるものなんだね。知らなかった。お金を持っているか否かはカースト制度と関係ないことなんだ。

教育もなかなか彼らを受け入れてくれない。ザナが入れようとしているのは寄宿制、ということは公立とは違うということか?学校には通っているみたいだし。確かに私学に入れるなら日本でも審査が厳しそうだよね。

よくできているが疑問に思った点もある。子供を中心にしているので仕方ないが、写真教室に関してや寄宿学校にいれることに対しての親があまり描かれていない。インド国内では水商売の女性に対する理解がないと批判もされているようだ。

また、結局ザナはインド系とはいえイギリスで生まれたイギリス人。現地の言葉も話せない。外国人が貧しい子供を救うという構図がどうしてもみえてしまう。偽善的だという批判もかなりある。

とはいえ最後にその後どうなっているか、ありのままに字幕で出しているので偽善、プロパガンダとまでは感じなかったかな。全員上手くいっているわけではない、というかほとんどは現状から抜け出せていないのが示される。これが現実という感じ。

子どもたちの言葉や展開があまりに都合が良く違和感は感じたものの、インドの実態に鋭く切り込んだ作品だと思う。今彼らはどうなっているのかが気になるところ。
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