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鬼火のgenarowlandsのレビュー・感想・評価

鬼火(1963年製作の映画)
4.1
            7月23日、僕は死ぬ。

それまでの2日間、旧友たちにお別れをしよう。まだどこかに炎が消えずに燻っているかもしれない。
友人たちは、アランがアルコールの中で浮遊し眠っている間に身を固め、着実な人生を歩んでいた。
「いちご白書をもう一度」の歌詞を思い出した。

実らなかったアルジェの戦いへの反旗。友と熱く語り合う生きている確かなときめき。恋。身の丈の人生より、政治や哲学、夢想する未来の中にいた。青く若かったあの日々。

その刺激から抜け出せなかったアラン。手に入れた恋は愛にならず、手を伸ばしても触れることができない。

心の炎はまだ消したくない。
アルコールに溺れても満たされなかった。一人、止まった時の中にいたい。

友よ、あの頃と同じ議論をしようと訪ねても、若さを笑われ、純粋さを愛おしく思われ、アランは社会から外れていることに再び気づかされる。

友人たちは堅実に生きている。それは僕たちが見下していた生き方だったはずなのに。

アルコール依存を頑張って克服しても、友人たちと同じ話ができない。人生に遅れたのか、別世界に生きているのか、孤独を感じる。

認めてほしかった。
アランの炎は熱い、と。
ただ、若い、と切り捨てられ。

心の炎は眠っているだけ。
一緒に誰かと燃え尽きたかった。
燃え尽きたい自分を理解してほしかった。

それまでの経緯は友人との会話の中でしか推し量れず。既に30代になっていて、アランがなぜそこまでの状態になったかの直接的な原因はわからなかったのですが(夫婦関係だけとは思えず)、実在の詩人の伝記から着想を得ていて、アランは詩人か著述家のようです。

同じ原作から、「オスロ、8月15日」「リプライズ」が制作されています。

アランと同じように、学生時代の友達は超超保守的で堅実なレールを決して外れないように生きていて、私は'アウトロー'と呼ばれるほどそのレールの外にいるので、アランの気持ちはわかるところはあっても(孤独というより孤立)、人と同じでいたいとは思わないし、彼ら彼女らに認めてもらいたいとも全く思わないな。

この孤独と孤立を詩や文章にして芸術に高めればよかったのに。そうすれば、再び炎は燃えると思うのだけど。



登場人物みなお洒落で素敵だった。女性の美しさ、カッコ良さ、髪型もファッションも。この時代の車が好き。
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