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鬼火のSoulFoodKitchenのレビュー・感想・評価

鬼火(1963年製作の映画)
4.5

昔、たぶん、エリック・サティの音楽が使われてて、なんか名作らしいと言う評判で見たと思う。
その時は、果たして、唐突なラストの衝撃はあったけど、それ以外は雰囲気は好きだけど内容に関しては、よくわからなかったのが正直な感想やろう。
今、見返してみたら・・・やっぱり凄い好きな映画やった。
そして、よく見ると、台詞の一つ一つに明確なヒントが隠されていた事に気付いた。
アラン(モリーリス・ロネ)はフランスからのアルジェリアの独立戦争に何らかの形で参加していた事がわかる。
おそらく彼は、そこで多くの年齢の近しい人達の死を目の当たりにしたと思う。
2つの戦争を経て、アランは生き残った者の後ろめたさを感じながらも、生きる事の意味を問い正していたはずだ。
結果、酒にも溺れてしまった。
生きる意味を見出せなかったアランは死を決意し、昔の友人を尋ねて別れを言いに行った。
彼は、何度も友人達に「僕は旅立つ」と言う言葉を使ってる。
しかし、昔の友人達は、彼の言葉を真に受けようとしない。
どころか、地道に生きる事を論したり、ブルジョアな生活の中で空疎な怠惰な生活を送っているだけである。
アランの言葉の意味を真に理解したのは少なくとも、画廊にいたアーティスト(ジャンヌ・モロー)の女性と、ブルジョアの屋敷にいた、友達の妻だけであろう。
そのアーティストの彼女も怠惰な麻薬漬けの日々を送っている。

「生きる事の後ろめたさ」
「生きる事とは、死を背負う事である」
それを問わずに生き続ける限界と、生きる事の意味を見出せなかったアランは、生きる屍になるよりは死ぬ事による新しい旅立ちを選んだと思う。

こんな映画を青春期に見たお陰で、その後、アメリカンニューシネマに代表される様な、破滅に向かう者達の映画に心を動かされたのかもしれないな。

そう言う意味では罪作りな映画であると共にヌーヴェルヴァーグの傑作である事には違いはないな。
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