【生きるための犠牲】
BS録画にて。
グレゴリー・ペック主演の、四分の三世紀も前の映画ですが、見たのは今回が初めて。
原作のローリングスの小説は今も邦訳が(新しく)出ているようですが、どの程度読まれているのでしょうか。
昔はわりによく知られた物語だったと思いますけど、昨今の若い人は知らない場合が多いかも。
といっても、私も小学生のころに少年雑誌に載ったダイジェスト版で読んだだけなのですが。
19世紀後半、フロリダ州北部の、ミシシッピー川からほど近いところにある開拓農民一家。
そこで生きることの厳しさを、少年ジョディーの目を通して描いています。
実際、この映画には「死」が何度も出てきます。
そもそも、主人公の少年は開拓農家で父母と一緒に暮らしているのですが、最初から一人っ子だったわけではなく、他にもきょうだいがいたのに幼くして死んでいるのです。
家のそばには彼らの墓所も設けられている。
隣の農場には、足の悪い同年配の少年がいる。
ジョディーの友だちですが、或る日、突然死んでしまう。
むかしは、このように、子供でも急死してしまう場合が珍しくなかった。
一人っ子のジョディーは子鹿を飼うようになる。
しかし、鹿はもともと野生の動物です。
犬や猫のようにペット向きに品種改良がなされてきた動物とは違う。
そこから、生きるための残酷さを少年は学ぶことになる。
こういう残酷さをきちんと教えることは、子供向けの物語であっても必要だと私は思う。
ところが最近のアメリカ映画は、あらゆる動物が品種に関係なく仲良く交流するなんて話があるように、この点できわめてお子様向けになっている。大人向けでもお子様向けになっているのですから、救いようがない。
その点で、75年前のこの映画は(原作もですが)非常にまともと言えるでしょう。
アメリカ古典期の映画らしく、グレゴリー・ペックがハンサムなのはもちろん、子役の少年も美形。
これまた、昨今のハリウッド映画に出て来る男の子や女の子の平凡な容貌にうんざりしている私には、ことのほか新鮮でした。
映画はやはり、美男・美女・美少年・美少女で作らなきゃ、ダメですよ!!