さー

モンスター: その瞳の奥にのさーのレビュー・感想・評価

モンスター: その瞳の奥に(2018年製作の映画)
3.7
強盗殺人事件裁判の被告人席に現れたのは、17歳の黒人の少年。それだけで、陪審員の中には有罪だと決めつける人がいる。
暴力と無縁の生活を送ってきた少年スティーヴが、拘置所という過酷な環境に置かれ、常に疑惑の目を向けられて、自分自身を信じられなくなっていく様を、淡々とした筆致で描いたヒューマンドラマ。

フラットな視点で物事を考えることの難しさを感じる作品だった。作品(評決)には、作り手(陪審員)の意図が必ず入るという点で、映画制作と重ねられているのも分かりやすい。
最初から有罪と思っていると、全ての証拠がそう見えてくるし、逆もまた然り。「12人の怒れる男」を被告人の立場で見るとこんな感じ…なのかな。

ただ、法廷モノとしては、若干スリリングさに欠ける気がした。主人公スティーヴの日常に重きが置かれていたからしゃーないか。もっと、観客を陪審員に見立てて、裁判の内容を詳しく教えてほしかった。何なら、陪審員たちがどんな議論を経てあの結論に至ったのかが知りたい。

上滑りする母親の言葉、全てを口にできない父の苦悩。
ああいう悪友との出会い方、まじで現実によくありそう…全然ひと事じゃない。
常に冷静な弁護士の姿が救いだった。
さー

さー