さー

ファイアー・オブ・ラブ 火山に人生を捧げた夫婦のさーのレビュー・感想・評価

5.0
ドキュメンタリーの真髄を見たかのような気持ちだ。CGの力で『すごい映像』が溢れている中で、生の映像がもつ凄みを100分間浴び続けた。その凄さは、映し出される数々の噴火の瞬間からくるものだけでなく、カメラの反対側で、この映像たちを撮ったクラフト夫妻という存在に由来するものだろう。彼らのことを知れて本当に良かった。

本作の魅力はふたつ。一つ目はもちろん火山の映像。そのひとつひとつが、「地球は生きている」ことをひしひしと感じさせる。意思を持っているかのような動きを見せるマグマは、地学に何の興味もなかったわたしの目すら引きつける。

そしてもう一つの魅力は、そんな火山に取り憑かれたカティアとモーリスというふたりの人間だ。この世には、出会うべくして出会い、結ばれるべくして結ばれた夫婦がいるように思うが、彼らもまさにその一組。きっと何万回生まれ変わろうとも、揃ってこの人生を選ぶのだろうと感じさせるものがあった。それを愛と呼ぶのか、執念と呼ぶのか。彼らを火山へと駆り立て続けた感情を表現する言葉は思いつかない。

パッケージを見て、「火山」のドキュメンタリーだと思って敬遠している方にこそ、ぜひ見てほしい。本作に映し出される人間の中には、マグマ以上に熱い血が通っている。
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