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子どもたちをよろしくのhrt2308のレビュー・感想・評価

子どもたちをよろしく(2019年製作の映画)
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シネマ2

こういうテーマの映画を観るのに覚悟がいる。企画は元文部官僚のふたり。子どもたちの周辺で起きたいじめ、虐待など様々な事案を見てきた人たちだ。昨今のニュースで報道されたような出来事がふたりの中学生の家庭の話に盛り込まれている。

中学二年の稔(杉田雷麟)の父(村上淳)は仕事がうまくいかず酒を飲み母(有森也実)にDVを、母の連れ子の姉・優樹菜(鎌滝えり)にも性暴力を繰り返している。優樹菜は家計を助けるため密かにデリヘルで働いている。母はすべて知っているが目を背け酒に逃げただ無力で泣くばかり。

洋一(椿三期)の母は家出し、父(川瀬陽太)は運送屋でトラックを運転していると偽りながらデリヘルのドライバーをしている。その稼ぎもパチンコや競艇、スナックの女に注ぎ込み、家のガスも電気も、果ては洋一の修学旅行の金も使い、デリヘルのオーナーからも借金を重ねている。

稔は仲間と父がデリヘルのドライバーをしている洋一をいじめる。しかし、自分の姉・優樹菜がデリヘル嬢だと知ると、今度は自分がいじめの対象になることを恐れだす、、、。

まったく気が滅入る話だ。出てくる大人は心が弱い人ばかり。それを見ている子どももそうなっていく。そのしわ寄せは一番問題に直面し逃げ場のない者に集中する。殺伐とした風景が続くなか、稔と優樹菜が気晴らしに動物園に行くエピソードはホッとする。

力作に違いない。問題点にストレートに切り込み、人間の弱い部分、ずるい部分が描き出されている。問題のすべてを物語に持ち込もうとしたせいか、登場人物がすべて繋がって図式的すぎるように思えて仕方なかった。また市長候補の娘の誕生パーティー・シーンの取って付けた感は何だろう?どうしてもデリヘルの話題を浮上させなければいけなかったのか?他の部分が緊張感にあふれたものばかりなので一層気になった。終盤物語が激しく動き出すが、一番引っ掛かったのは優樹菜の行動だ。観る者が自分の意識を問われれる作品。
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