つるみん

バビロンのつるみんのレビュー・感想・評価

バビロン(2021年製作の映画)
4.0
【Action!】

各々の時代を映した映画業界の栄枯盛衰作品は多くあるが、リュミエール兄弟から始まった映画史100年以上の中で無声からトーキーに変わる1920年代に焦点を当ててくれた事にまず感謝する。僕自身が学生の頃に一番調べ尽くした時代なので非常に興味深かった。またその部分だけでなく、白黒からカラーに移行という変化にも焦点を当てており、激動の映画業界で働く人々のキャリアの「生」と「死」を描き、その魂を現代に残した。

今よりも勿論セットや小道具が備わってない時代なので、逆を言えば何でもアリ。これがどういうシーンなのかを理解してるのは恐らく数人ってレベルの破茶滅茶撮影。撮影のセットが沢山あって、各々のシーンを死ぬ気で撮ってる様子をワンカットで駆け巡るシーンは印象的だった。

正直188分は長いと思うし、本当に必要だったか?と疑問を抱くドラマパートは少なくとも数カ所あった。しかし最終的に音声や色が出る喜びがあると同時に一つの時代が終わる悲しみの涙にも見えたあのクロースアップでやられてしまった。言うまでもなくあれは『ニューシネマパラダイス』のオマージュであり、そこにリスペクトを追加した怒涛のラストシーン。

※若干のネタバレ含む

最後の最後に〝映画愛〟のみで泣かせにきたなデイミアン・チャゼル。『ラ・シオタ駅への列車の到着』から『月世界旅行』や『アンダルシアの犬』『裁かるゝジャンヌ』等のクラシックな名作を連ね『ベンハー』『オズの魔法使い』『2001年宇宙の旅』のように色が追加され、圧倒いう間に映像技術が進化し『ターミネーター2』『ジュラシックパーク』『マトリックス』『アバター』など現代映画に。
この襷を繋ぐかのような歴史があるからこそ、我々は今も「映画」という娯楽であり芸術を楽しむ事が出来ている。よく考えてみたら物凄いこと。100年以上前に作られた映画が今この時代でも鑑賞できるという。まさに遺産。

〝映画愛〟があるからこその野心的で卑劣なメッセージを届けたデイミアン・チャゼル。だから僕は『ララランド』も好きなんだよ。
もし私が学生の頃に本作を観ていたら、きっともっと映画について深掘りしていたに違いない。映画欲がグッと高まる一作であった。

しかしそれにしてもデイミアン・チャゼルはマジで『雨に唄えば』が好きなんだな。
つるみん

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