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バビロンのEditingTellUsのレビュー・感想・評価

バビロン(2021年製作の映画)
3.9
彼の映画は、画と音への圧倒的なこだわりによって、映画館でそれを見れる喜びが凄まじい。

4年ぶりの長編。いやーまった。途中に ”The Eddy”っていう最高のシリーズを作ってくれたけど、”First Man”(2018) から考えるとだいぶ待った。そして、彼のスタイルをより味の濃いものに仕上げてくれた。

撮影は文句ないですよねー。
フィルム撮影であのカメラワークはちょっとすごすぎる。最終の画が見えてないとそう簡単にはできないし、映画のBeautyを語る上では外せないモノであるからこそ、正面から向き合ってるのがすごい。
映画終盤では、映画の歴史自体への称賛と感謝が出てくるのだが、そこに出てくる作品、監督たちが作り上げてきた、映画の手法、映画の言語を明らかに意識して使っている。
観ている側としては、そんな歴史なんて知ったこっちゃないし、それがどんな手法であれ興味はないのかもしれないが、確実にその手法から生まれる効果を全身で受け取っている。
みんなが感じ取れる映画っぽさ、そして、映画っぽさを追っかけるだけでは追いつけない映画の本質みたいなところを力強く感じた。
あまり、技術-drivenになりすぎず、あくまでも歴史モノの映画として、キャラクターの感情を2Dのスクリーンで最大限表現するために先人の知恵を使っているといったところも、180分飽きずに見れるところ。

音に関してももう、文句なし。
まず、Justin Hurwitzの音楽が最高すぎる。The Eddyでもそうだったが、映画の中のキャラクターが演奏する楽曲がまず、最高。そこで、圧倒的没入体験。もう、それだけで映画館に行く価値がある。
そして、今作品では、効果音がインパクトあった。Damien Chazelleの独特なテンポ感にさらにアクセントをつけるように、酒、バンド、象、ピストル、皿の効果音が随所に見られる。舞台もサイレント映画からトーキー映画への移行の時期だから、音に関して力を入れずにはいられないのも納得。

今作、何度も語られてきたストーリーだけに、新たな発見や驚きなんかはないにしても、映画人としてその時代が及ぼした影響の大きさにメッセージをのせたくなる感覚はとても伝わってきた。本当に映画が好きなんだな。映画を観ること、作ることはもちろん、この発展を続けているまだ若造の芸術の興隆に立ち会えていることへの興奮が収まらないんだろう。
だからこそ、ここまで下品に振り切っても、面白いと思えるカオス。是非映画館で。
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