ずいぶん映画らしい映画をみた。
PTA、クストリッツァ、タランティーノっぽいのがやりたい、というのを包み隠そうともしないあたりが清々しい。『アンダーグラウンド』『ブギーナイツ』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』あたりを切り貼りするだけで、『バビロン』とまったく同じものが完成するだろう。
この映画ならではの目新しさはなにひとつないのだが、それでもいいじゃないかという推進力が確かにある。だって、映画はそもそも切り貼りの芸術ではないか。
『セッション』も『ラ・ラ・ランド』も子供だましのつまらない映画だったが、少なくとも『バビロン』は〈1から10までまるっきり「分かる」映画〉ではないので、こういうのも作れる監督なのだという発見は大きかった。
一方で、分かりにくい映画でもない。いくらか自己満足の域に踏み込んでしまうのはハイコンテクストな作品の宿命だろうし、エヴァや『君たちはどう生きるか』に比べたらはるかにウォッチャブルなエンタメ作品に仕上げている。ラストをちょっとこねくり回したせいで賛否両論を招いているが、あんなのはかましているだけのお飾りなので、放っておけばいいのだ。
地下の彼、あれだけ引っ張っておいてネズミ踊り食いしてただけなの、アホらしくて笑った。