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ブラックバード 家族が家族であるうちにのchaooonのレビュー・感想・評価

3.9
進行性の難病により、次第に身体の自由を奪われ死を迎えるリリーは、安楽死の道を決断し、最後の穏やかな週末を家族を集めて共に過ごそうと計画する。

ほぼリリーの自宅内とのその周辺ビーチでの場面展開、登場人物も最後の別れを告げる家族のみで進行していくけど、全く退屈さを感じず最後まで引き込まれるように観てしまった。

悲しくて重い話かと思いきや、抜け感のある明るいライティングやリリーのお家の精悍さ、ユーモアも随所に入った会話のやり取りにほっこり和むシーンもあり、そこまで深刻に落ち込まずに観てられた。
ただ題材が題材だけに、満遍なくずっと泣ける😭

なぜまだ元気で身体も動くのに?
元気で身体が動かせる今だからこその選択。

序盤でグラスを落としてしまった時の、動揺を抑えようとするリリーの姿が、目の動きや絶妙な表情で感じ取れて、このワンシーンでリリーの精神状態や性格、病気で自由を奪われ自分が自分でなくなってしまう恐怖の全てが現れていた気がして、スーザン・サランドンの演技にただただ脱帽し、のっけから涙が止まらない😭

尊厳死に関しては倫理的な問題や法の体制を見ても、難しい問題だけど、そこに対していいとか悪いとか議論は一切なくて、死へ赴くことは決定事項としてあって、それに対する家族一人一人の心の向き合い方をメインに描いているのが、興味深かった。
なんか変に説教臭くなくてよかったな。

家庭を持ち、いつも正しくあろうとする長女ジェニファーは、母の選択も尊重し理解を示す。
対して奔放で恋人ともつかず離れずな次女のアンナは、集まりに現れるが、心の内では受け入れられないでいる。

次女役のミア・ワシコウスカは自由奔放そうだけど、内面は病んでる感じがすごくハマるね。

長女役のケイト・ウィンスレットは最近くたびれた中年女性役ばっかり観てたイメージだけど、今回はちょっと硬くて規律を重んじるようなピシッとした母親役で久々に違う感じを観たけど、さすがこちらもハマる👏🏻

気持ち的には次女のように駄々こねたい。
準備なんていつまでも出来る気がしないし、受け入れる時なんて来る気がしない…。
でも実際に自分の母が…って立場になったら、私は長女のような態度を取るだろうと思った。

ラストの静かな幕引き、エンドロールへの入り方は物悲しくて好きでした。






↓⚠️以下ネタバレ⚠️↓







終盤にある疑惑が浮上して、娘たちを中心に登場人物たちの想いや迷い、悲しみが露わになっていくけど、長女の気持ちが揺らぐ感じが私にとって注目ポイントだった。
聞き分けが良いふりして、母を尊重しようと勤めていても、いざとなると悲しみに押しつぶされそうになるのかな。
平常時なら流せることでも、こんな状況だったら、それを言い訳に計画を中止したいっていう想いの表れな気がした。

最後に場が騒然となり、計画は中止だ!!くらいまで、ぐちゃぐちゃに荒れる割に、リリーの一言で、急にしゅんと収まり、時が来た…みたいな流れがあっけな過ぎて、ちょっと物足りずというかなんというか、それで娘たち納得したのか!?ってモヤモヤが少し残る😂

自分の娘の知らなった事実、しかも今後生きていく上での問題が浮き彫りになったら、さすがに延期しようと私なら思うな…ここはどうしても共感しきれず…
自分がこれ以上何もできなかったとしても、自分がいなくなった世界で子供が健やかに生きていって欲しいと思ったら、愛情を示すのが親の務めじゃないのかな…
務め、というかそうしてあげたいという気持ちはないのかな…
まあもちろん自ら死を実行できる最良のタイミングであるのは分かるし、リリーの性格や子育てのモットーから考えると、計画の変更はないのかもしれないけど…
延期したところで一緒にいられる時間も出来ることも限られてるし、そもそもそこで揺らぐような人間は安楽死は選択しないか…
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