しちれゆ

ブラックバード 家族が家族であるうちにのしちれゆのレビュー・感想・評価

3.7
本作は安楽死の是非を問う作品ではない。
1人の女性が病に冒され安楽死を決意したことによって炙り出される家族の苦悩・葛藤の物語。リリー(スーザン・サランドン)の死に立ち会うべく集まった2人の娘とその夫、恋人、孫、友人が今際(いまわ)の時に臨み、ずっと言えなかった愛や悲しみや憎しみを吐露することで互いの真実を知り、理解し合い認め合い和解していく。さながらリリーの死(の決意)はパンドラの箱(『全ての贈り物』の意)のよう。彼女が逝って家族に残されたものは″エルピス″【希望】であったでしょう。
この作品の中ではたくさんの料理が食卓に並ぶ。生のための食であるはずなのに、明日死にゆくリリーが生き続ける家族と共にテーブルを囲み、微笑んでいるのがなんとも切ない。
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