たむ

お嬢さん スペシャル・エクステンデッド版のたむのレビュー・感想・評価

4.2
『別れる決心』が楽しみすぎるパク・チャヌク監督の前作を完全版で鑑賞です。
ここまでやりたい放題作家性を突き詰めて描き出した作品も珍しいでしょう。
オリジナルは公開時に劇場で鑑賞して、衝撃を受けましたが、久々に観て、新しい発見もありました。

エログロ描写が満載で監督の美意識の表現と女性の自立を日本統治下の韓国を舞台に描き出していきます。
3部構成で視点も変わり『羅生門』スタイル、精神病院に関わるところは『トリコロール』といった映画の引用、春画や絵画の芸術の引用。
真面目にやればやるほど、笑ってしまう行動と言動の数々。
そして本作の重要な鍵となるのは、キム・ミニさんの声。
朗読する役なので、声や喋り方は重要ですが、ホン・サンス監督作品でもミューズであるキム・ミニさんが素晴らしい女優さんなのは分かります。
本作では声が映画を引っ張って、ドンデン返しもあるだけに、韓国語も日本語も可愛く魅力的な声であるからこそ、成立する物語でもあります。
パク・チャヌク監督の描く悪しき男性性は復讐三部作の鍵となっていますが、本作はその極限的な欲望との葛藤があります。
欲望の発露が小説などを読む声、読まれる物語への想像力が観客も試されます。
映画そのものが欲望を喚起させる芸術であるのは、パク・チャヌク監督の作家性です。
語りと想像、芸術となる欲望。
賛否両論が出るのもわかる過激な作品ですが、破格の作品ですね。
たむ

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