のすけ

ブロークン・フラワーズののすけのレビュー・感想・評価

ブロークン・フラワーズ(2005年製作の映画)
4.0
誰かがピンクの手紙を投函するシーンから始まる。
その手紙が届く頃、終始無表情で気だるさ感MAXのビル・マーレイの愛人シェリーが家を出ていってしまう。
仲の良い隣人ウィンストンと差出人不明の手紙の中身を確認すると、それは昔の彼女からの手紙であり、実は別れた後に産んだ主人公の19歳になる息子がいて、最近家を出たので父親に会いに行くのではないかと思い知らせたかったという内容が書かれていた。
そこからウィンストンの提案で当時の彼女をリストアップし、ピンクの花束を持って訪ね歩く旅に出る。
ピンクの手紙にピンクの文字‥訪ね歩く先々で気になるピンクの携帯、ピンクのタイプライター、ピンクのリボン‥一体誰なんだ‥

ジム・ジャームッシュ独特の間の長さやビル・マーレイの無気力さが良い味を出しているのと、脚本が面白い。
脇を固める女優たちも豪華。

しかし!「まさかここで終わるのか‥やめろ‥終わるな‥やめてくれ‥マジでやめて!」というタイミングでエンドロール。。。
結局誰だったのか分からず観る者に考えさせる内容になっていて、最初ガッカリ感の方が強くレビューを読んでも皆結局誰なんだろうで終っているようだったが、いろんな考察を読んでいて、「なにっ!」というものを見つけ気になってもう一度観返してみた。
正解が描かれていないのでネタバレではないけど、以下は観終わった後に読んだほうがよいかもしれません。↓







やはり手紙を投函したのはシェリーではないか‥説。
最後シェリーから二通目の手紙が届き、便箋のサイズは違えどピンクにピンク文字‥筆跡を確認するとウィンストンが言ってその結果が出ないままエンドロールになる。唯一可能性が残されたまま終わるのがこのシェリー説(最後の車の少年もそうだが)
そして、冒頭の手紙を投函するシーン、手元しか映らないが、たぶん左手で投函しており左利き。劇中の4 人の元カノはたぶん皆右利き(グラスやカップを持つ手や、たばこを持つ手が右だった)シェリーが左利きかどうかは残念ながら分からなかった。ショルダーバッグって左利きの人左脇にくるようにかけるんですかねー‥?家を出ていくとき右手スーツケース、左脇にショルダーバッグと左手にトートバッグだったが、んー、これだけでは分からんな‥。
あとは、いちばん身近なピンクはシェリーだった。家を出ていくシーン、見返すと全身ピンクでヒールもピンクだった。しかも床に落ちていた郵便物の束を拾い上げピンクの封筒を1番上にして主人公に手渡す。家を出ていったあと、1人になった主人公がふと横に視線をずらすとそこにはピンクの花が生けてある。
あとは、想像でしかないけど主人公とウィンストンがあれだけ仲良しなら、きっとシェリーも関わりが深かったはず。もしかしたらウィンストンとシェリーが仕組んだ手紙の可能性もあるのではないか、あるいはあの無気力主人公では手紙を見ても動かないのはシェリーはきっと分かっているはずだから、シェリーからウィンストンに相談し、元カノを訪ね歩くように仕向けたか。そうだった場合なぜ元カノを訪ね歩くよう仕向けたのかは不明だけど、家を出ていくシェリーは自分自身もその1人として同じような立場なわけだし、間接的に他の元カノと会うことで主人公自身が過去におかした過ちと向き合う時間を作らせたかったか、家族を持とうとしない主人公に家族の尊さに気づいてもらおうとしたか。
ちなみに最後の車の少年はビル・マーレイの実の息子らしい。実は本当に19歳になる息子は存在していてあの車の少年、主人公とシェリーの息子だったりして。主人公が家族を持ちたがらないのでシェリーは妊娠を隠し通して出産していて、別の場所で育てていたか、養子に出していたか‥ま、想像ですが‥

いずれにせよ考察レベルだけど、様々なピンクや空港で見かけた少年、最後の最後に一瞬登場する車の少年等いろんな伏線なのかミスリードなのか分からないものが散りばめられているが、実は灯台下暗しで全く考えもしないし探してもいない1番身近にいたシェリーだ!というのであれば巧妙に仕込まれた脚本で唸るしかない。
最初観終わった時いまいち感が強かったが、いろいろ考えて観返してたら様々な発見があり面白い&深い作品だったなと思えてきた。3.0から4.0に急上昇した感覚!やっぱり映画って面白いなー。