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アリアのSのネタバレレビュー・内容・結末

アリア(1987年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

2021/03/13 DVD

錚々たる10名の映画監督がそれぞれ斬新な解釈でオペラ歌曲の映像に挑んだ奇跡のオムニバス映画。()内は5点満点中、好みで採点をしてみた。

①『仮面舞踏会』ヴェルディ(4/5)
監督:ニコラス・ローグ
台本は、スウェーデンの国王グスタフ三世が1792年に仮面舞踏会において殺された史実から取られ、更に王と暗殺者の妻の恋を絡ませる。オペラそのものは、検閲をかいくぐるため、設定をヨーロッパではないボストン(イギリスの植民地としてのアメリカ)としている。映画では更に1931年ウィーンでのアルバニアのゾグ王暗殺事件へと移している。クライマックスへの盛り上がりがドラマティカル。王を演じるのはニコラス・ローグ夫人テレサ・ラッセル。

②『運命の力』ヴェルディ(4/5)
監督:チャールズ・スターリッジ
ゆっくりしたテンポ、静かで優しい慈愛に満ちた音楽。しかし、映像が辿るのは、子どもたちの自動車事故の物語。子どもの純真無垢な表情を捉えた詩的なモノクローム映像が美しい。

③『アルミードとルノー』リュリ(5/5)
監督:ジャン=リュック・ゴダール
クレジットではdirectedではなくImageと記載。
スポーツジムでひたすらに身体を鍛える筋骨隆々たる男性たち。彼らはすぐ側にいる清掃する女性には目を向けることはない。色彩は赤、青、黄をバランスよく配置した画作りは定番のゴダール。清掃員女性はオール・ヘアヌードで身体の曲線が美しい。この辺り'80年代のゴダール作品は殆どまだ観れていないが『パッション』の芸術的カーヴィな女性達のヌードを思い出した。

④『リゴレット 』ヴェルディ(3.5/5)
監督:ジュリアンテンプル
映画プロデューサー夫婦が、別々にカリフォルニアの有名な「マドンナ・イン」でお楽しみをするという低俗コメディ。序盤に本作中唯一の台詞が挿入。主人公の男が‘’フェリーニ、アルトマン‘’と口走ると同様に作風もアイロニックでフェリーニ風。ウディ・アレン風らしき人物やプレスリーのそっくりさんがステージで歌う滑稽なシーンも。

⑤『死の都 』コルンゴルド(3.5/5)
監督:ブルース・ベレスフォード
オペラに合わせて歌う正統派の作風。しかし演じる男と女(若きエリザベス・ハーレイ)が引きのズームショットで全裸になっていたことが発覚。

⑥『アバリス』ラモー(5/5)
監督:ロバート・アルトマン 
本作中、最も卑猥かつアイロニカルな問題作。流石アメリカのフェリーニ。オペラを鑑賞する異形な客達を映しだす。ゾンビのようなメイクの精神患者に2階席には女装家(ゲイ?)風俗女らしき豊胸露出した女達まで。

⑦『トリスタンとイゾルデ 』ヴァーグナー(4/5)
監督:フランク・ロッダム
DVDリーフレットの記載ではモノクロームとあるが、全編カラー。流れるようなロードムービータッチでアリゾナから歓楽街ラスヴェガス、最後は再びアリゾナへ。2人は逃避行中の男女だろうか。求められる性愛と血の流れにシンクロするヴァーグナー。ブリジット・フォンダがデビュー作ながらオールヌードに。そのフレッシュな美しさに釘付け。

⑧『トゥーランドット』プッチーニ(4/5)
監督:ケン・ラッセル
'60年代に描いたSF映画のような世界から、交通事故で生死を彷徨う現代へタイムスリップしたような生死の彷徨いが描かれる。傷メイクが痛々しい。

⑨『ルイーズ』シャルパンティエ(5/5)
監督:デレク・ジャーマン
若きティルダ・スウィントンが放つ輝きは女神のよう、いや女神だ。波打ち際で水着で男性とはしゃぐカラーとモノクローム映像が美しく震えた。

⑩『道化師』レオンカヴァッロ(3.5/5)
監督: ビル・ブライドン
ラストを飾るのは、各監督作品の「つなぎ」を果たしていたウィリアム・ハートが道化師の衣装を着け、舞台で歌う。
ここでは、故意に古いSPレコードの、ノイズだらけの音源が使われ往年の名歌手エンリコ・カルーソ(1873-1921)の録音である。
収まるべきところへ収まったラストといった印象。
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