ジョー

キンキーブーツのジョーのレビュー・感想・評価

キンキーブーツ(2018年製作の映画)
4.3
真っ赤な赤が好き



苦手意識を持つ人も少なくないジャンルなので合う合わないは大いにあると思うが、合えば間違いなく心に響く作品だと思う。

夢・恋・アイデンティティ、この作品を見る前はそんなテーマが頭の中をちらついていた。確かにそれらは内包されているが、この映画を構成する小さな要素の一つでしかない。
最も心惹かれるのは熱気だ。"変わりもの"の真っ赤なブーツ完成させるためにぶつかり合う友と友。ベルトコンベアをステージに早変わりさせて喜びを分かち合う仲間たち。登場人物たちも、それを演じる人も、世界を作った裏方も、相当な熱を帯びて作り上げたというのが絶え間なく伝わってくる。

実際の会場で観るのとはまた違った楽しみ方だが、これはこれでありだと思う。日本人が集まって作り上げたバージョンを生で見ても良いし、本家の舞台をカメラで押さえた映像作品として楽しんでも良い。自由を謳う作品なんだから楽しみ方だって自由なはず。

最近はネットで調べれば動画や記事などで簡単にストーリーを知る事ができる。そしてそれに満足している人も多い。
だが知っている事と自分なりの解釈で味わった経験は全く別物だ。
この物語をダイジェストや字面で観ても何の感動もないだろう。

舞台の端に見切れる細部まで作り込まれたコンテナ一つに、鬱々とした表情で歩く人物の裏で微かに鳴っている音楽一つに、
湧き出てくる感情を乗せて爆発させた歌一つに忘れられない感動が詰まっている。この作品を作り上げた大勢の人たちにスクリーンの前から拍手を送りたい。
ジョー

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