るるびっち

星の子のるるびっちのレビュー・感想・評価

星の子(2020年製作の映画)
3.3
薄味のとんこつラーメン作りました、みたいな。
食材と製法が一致していない。
古典ドラマツルギーなら、異なる主張をぶつけ激しく葛藤し、互いの主張を否定して大きなドラマのうねりを創る。
しかし本作は、邦画によくある描写を積み重ねていくやり方。特にドラマチックなことはない。少しあっても、うねりにはならない。
ドラマではなく描写なのだ。
その描写の真の意味合いは、観客に預ける形。
親とはぐれるとか、星が見える意味とか知らねーよ。地味過ぎる。

親とすれ違い、中々出会えないのがクライマックス。
マーベルだったら世界を滅ぼしてるのに、中三で迷子がクライマックス!! 二時間も見て、迷子シーンがクライマックス。正気か?
『はじめてのおつかい』の三歳児の方が見せ場があるよ。

星を見るラストも、親と子供で星が見えるタイミングや見え方が違うことを長々強調。
それらを見て、主人公の少女の中に今までと違う不安や親との相違が現れているのだな・・・と感じるのは映画を見慣れている人。
一年に一回しか映画を見ない一般客は、何が言いたいのか解らず戸惑う。
薄味ラーメン。ラーメンも映画も食通の人のものではない。

見せ場も、せいぜい授業中に先生に叱られる程度のショボさ。
普通の子でも、好きな先生に叱られて傷つく位のことあるよ。
決定的に宗教が絡んでいるとは言えない。選択ミス。

宗教のメリットより、デメリットの方が二世たちは大きい。
イジメられるし、浮くだろう。
思春期になれば親の奇行が恥ずかしい。親との決別がポイントのハズだ。
『エホバの証人』なら、事故でも輸血拒否のドラマチックな設定がいくらでも作れる
そうしたドロドロは止めて、普通の子供の普通の成長話にしている。
宗教二世も普通の子たちですよ、特殊じゃないですと言いたいのか?
初恋の先生の存在で初めて変な宗教を意識した。変化の予兆はあるけど、まだ幼くて大きな変化はない・・・薄味。
とんこつラーメンを選びながら、とんこつでも普通に薄味にできますよ~って感じ。だったらとんこつ選ぶなよ。
とんこつ選んだ時点で、背脂ギトギトにしろよ!!
宗教二世という問題の大きさと、言いたい事(でも普通の女の子です)とのバランスがとれていない。

・・・でも原作がそもそも「宗教」という濃厚味のフリして、実は「普通の少女の成長」という薄味テーマなのだったら・・・
地味演出という製法も合ってるのか・・・
食材と製法は一致してました。
どっちも薄味です。
とんこつではなく、そーめんでした。のどごしがいい。
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