つばき

星の子のつばきのネタバレレビュー・内容・結末

星の子(2020年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

怪しい宗教にハマった夫婦のこどもの立場の複雑さが繊細に描かれていた。未熟児で体調を崩しやすい次女が入口であったが故に、当人であるちひろは両親がおかしいことに気が付いても、滑稽なカッパのような両親を横目にクッキーもあるし、といい子としてやり過ごす。

一方姉のほうは聡く、両親を説き伏せようとするもあまりの話の通じなさに匙を投げ、自らを解放するために必死にもがいたのが壁の穴ひとつで察せてしまう。姉妹の穏やかな語らい、きっと別れを告げるための最後のやわらかな時間に、結婚式、新婚旅行の話をささくれを剥くように無邪気に聞くちひろを責めない理性は持ち合わせていて、そのどれもが叶わないのだと諦めている物悲しさと、それでもバイバイにスマイルマークを描く優しさとに胸が苦しくなった。

2人の会話の続きがおじさんの登場によって明かされたときの胸のざわつきといったら…お姉ちゃんのハサミに込められたものの重たさ。禁止されてるコーヒー。

淡い初恋の相手から漏らされる容赦のないストレートな言葉のナイフが突き刺さるちひろの逃避と、心の底から風邪じゃないかと心配の言葉をかける両親の噛み合わなさがしんどい。

宇宙パワーの水で風邪をひいたちひろに、ただひとこと、風邪だよって伝える保健の先生の言葉にぐっときた。

日常から宗教施設へ急速に移り変わる後半の怒涛の洗脳っぷりに胸焼けがした、ランダムで配る座席と歓談の時間、縁をたくさん結ぶことで抜け出さない構造になっているのが生々しい。

星を眺める家族の時間、本当に流れ星なんてあったのかなって邪推してしまう、お姉ちゃんが生きていたことだけが救い。ちひろがどうなっていくのかは想像がつかないモヤりとした後味。教師に傷つけられたあとに、そっか、とただゆるやかにちひろを否定も肯定もせず隣にいてくれた2人との縁が続いてくれたなら…と願ってしまう。白黒つかないところがリアルだと思いました。世間と断絶されてるわけでもなく、宗教から隔離されてるでもない。
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