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さよならテレビのokawaraのレビュー・感想・評価

さよならテレビ(2019年製作の映画)
5.0
「少なくともこの映画には」ワタナベさんを、「仕事の内容以上に」否定する人は出てこないんですよね。

なのに満席のシアターで、自分も含めた鑑賞者たちは、ひたすら彼を「仕事の内容以上に」嘲笑っていませんでしたか?
嘲りのない笑いだったのであれば、その底意を知りたいです。


「テレビの実態」とか「映像物がそもそも前提にする、編集という嘘」については、形式的な人物像を「都合よく」引き合いに出すためのモチーフ。そしてそれはミスリードにもなっています。
なぜなら、この映画の本意は、限定的な業界についてではなく、どんな社会にも付き纏う「どうしても取り残されてしまう人々」と「彼らを精神的な踏み台にするしか生きられない人々」について語ることだからです。
そして鑑賞者たちのほとんどが、後者ではないですか? 試されていることにも気づかず、のうのうと講釈を垂れているのであれば、これほど胸糞の悪い様はないです。


かといって、嘲笑者の振り見て我が振り直すことはできません。
なぜなら自分も、ワタナベさんのような安心材料がないと生きられない、どうしようもない人間だからです。
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