和製ファンタジーの女王、上橋菜穂子原作をジブリ作品の作画監督が長編アニメ化した骨太作品。
未鑑賞の方のために言っておくと、前情報をさらっと予習しておかないと序盤で置いていかれる危険性がある。冒頭、スター・ウォーズばりに字幕での世界観の説明があるが、文章が硬いうえに固有名詞が多く、頭に入りづらい。公式ホームページに相関図があるのを眺めてから行くだけでも理解度が変わるので、是非。
さて、置いてけぼりは回避できたところで内容に触れると、もう大満足。序盤から『もののけ姫』オマージュの展開が続き、戦闘シーンは「アルスラーン戦記」を彷彿とさせる(登場人物たちの顔立ちのせいかもしれない)大迫力。確かな生活感のあるファンタジー描写は、指輪物語などの本格ファンタジー好きにはたまらない。
緩急の付け方も極めてうまい。平和な村での生活のシーンから、緊迫した追いつ追われつのシーンへ一瞬で切り替わる。相関図がないとわかりにくいといった世界観も、理解すれば極めてシンプルでのめり込める。
街並みはチベットやモンゴルといった、アジアの内陸を想起させるもの。このような景観のファンタジー作品は珍しいので、新鮮味をもって楽しむことができた。
原作のファンからすれば2時間にまとめるのは少しぎゅうぎゅうらしいが、よくできた作品のように思う。