慎一郎

ひとくずの慎一郎のレビュー・感想・評価

ひとくず(2019年製作の映画)
4.0
画面全体にあふれだす昭和感(ちばてつや感)。映画としての巧拙でいえば稚拙なところも多いのでしょうし、ラストはそれこそこそばゆくなるというか、ちょっと赤面してしまうようなオチだったりもするのですが、私はこういう映画、作り手の情熱、熱量がまっすぐに伝わってくる映画は大好物です。ロングランになっているのもよくわかる。
まっすぐに、とは書きましたが、昭和ちばてつや風味は意図的なものでもあると思います。題材が題材なだけに寓話的にさえ見える昭和演出がなければただただ重い映画になっていたでしょうし、小劇場を主戦場とする大西さんたちの大きめの演技とのバランス、そして何より限られた予算内でエンターテイメントとして成立させるための昭和感でもあるのだろうなと。そう考えると戦略的な映画でもあるよね。
でもそういう「戦略」よりも「情熱」が前にでてくるのがこの映画の良いところ。そこで叫ぶ必要ある?とか、それは映画的な表現としてどうなの?とか思う。思うけど、でもやっぱり揺さぶられてしまう。心が動く。映画だけじゃないけど、あらゆる芸術において一番大切なことって「心が動く」ことだよね。だからこの映画は傑作なんです。傑作!!
舞台挨拶で大西監督自身もおっしゃってましたが、実は笑うところも結構あって、そういうユーモアのセンスもとても好き。個人的かつ鑑賞側の我儘なのは百も承知ですが、大西組には変に器用になったりせず、無骨で、まっすぐな映画を作り続けてほしいなーと思いました。機会あったら舞台も見てみたいな。
慎一郎

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