慎一郎

ガザ・サーフ・クラブの慎一郎のレビュー・感想・評価

ガザ・サーフ・クラブ(2016年製作の映画)
3.5
まずはこの映画の上映に尽力された皆様に感謝。いまこのタイミングでガザを取り上げることそのものがとても大切なことと思います。
この映画が制作されたのは2014年なんですね。2014年に至るまでの10年程度の歴史をwikipediaで改めて調べてみたのですが。ハマスがパレスチナ自治政府を批判して地方議会で過半数を取ったのが2004年。ガザ地区を武力制圧したのが2007年。以降、ヨルダン川西岸地区をファタハが、ガザ地区をハマスが実行支配する状態が続いて。ハマスをテロ組織とする西欧社会がガザ地区の支援を一時中断したり、イスラエルによる空爆が繰り返されたりして。ファタハとハマスが和解し連立政権を樹立したのが2013年で。迎えた2014年7月、ガザ侵攻が起きている。
おそらくはこの映画が撮られたのはこのガザ侵攻の直前ぐらいなのかと思います。映画に登場するサーフィンが大好きな少女がサーフィンができなくなっていったのもハマスの実行支配により原理主義が広がっていった経緯と重なっているのかなと。
10年の時を経たいま、ガザのビーチはどんな風景になっているのだろう。昨年からのイスラエルの侵攻でパレスチナの人々が南に南に追いやられているいま、残念ではありますが映画に登場したサーファーたちがサーフィンを続けている可能性はかなり低いのではないかと思います。そもそもまだ生き延びてくれているかどうか。。。
ハマス台頭の背景にあるのは90年代にPLOが進めようとしたイスラエルとの和解路線に対する強い反発で。それはパレスチナの歴史、人々の思いを考えると当たり前のことで。でもハマスが持つ原理主義的傾向が市井の人々の自由を奪い、直接的な命の危機を拡大していることも否めなくて。どちらが良いとか悪いとか簡単に断言はできないとは思いますがただ。少なくとも私個人の意見として、暴力の連鎖はまず強い側が止めるべきだと思います。国際社会もイスラエルによる侵攻を止めることを最優先にするべきです。国際社会の構成員である日本も、イスラエルに対し強く自制を求めるべきだと思います。そうしてガザの人々の安全を確保したときにはじめて、ハマスの是非をパレスチナ人自身が考え直すことができるのではないでしょうか。
現段階では夢物語なのでしょうが。夢がないと未来もないので。2014年のサーファーたちが夢見たガザ・サーフ・ハウスがいつか実現して。パレスチナ人とイスラエル人がともに、あの素晴らしい波を楽しむ未来をくることを願いたいと思います。
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