Kenjo

プロミシング・ヤング・ウーマンのKenjoのレビュー・感想・評価

4.3
話題になってたから見てみた。
話を聞く感じ、フェミニズム映画なのかなーと想像してたけど、個人的にはそういうわけでもないと思った。

とりあえず、1番引っかかったところだけ。
主人公が過去の恨みから男性に対して復讐している場面から始まる。ノートには沢山の撃墜マークのようなものが書き込まれている。その復讐というものがかなり引っかかった。手口は、クラブで酔っ払ったふりして、声かけてくる男を待ち、その男の家までのこのこ着いていって、いざという時に実はシラフでしたー!って驚かして、男の慌てふためく姿を見るというもの。
正直、これはどこが復讐になってんだって思ってしまった。そのまま強引に、、なんてことなるとリスク高すぎるし、男が逆上したらさすがに勝てないし危ない。その割にリターンもちょっとせいせいするくらいで、訴えて示談金ばっこりもらうみたいなところまでやんなきゃいけないでしょって突っ込んでしまった。
どうせやるなら社会的に制裁するくらいのことしないと費用対効果薄い、、

まあ、そういう復讐は最初だけで、元同級生に会ってから過去と向かい合い、過去に何が起きていたのかという謎解きのフェーズにはいる。
ここで本当に復讐したい相手が誰なのかという話になり、やっと主人公のドラマ上の欲求が分かる。ちょっと脚本の構成的にはもうちょっとやり方あったのかなーと思った。まあ、"プロミシング"の部分を最初に描きたいのかなという意図は感じるんやけど、結局医学部ドロップアウトした以上の情報はなく、ちょっとプロミシング要素は微妙だったかも。

閑話休題。この映画のテーマについて考えてみる。これは、女性の性被害が、とか男女の性差が、とかではなく、「罪と罰」の話だと感じた。
この物語はとある事件を中心に展開される。その事件に関わった人は全員が罪を犯している。
しかし、その人たちの罪の意識というのは人それぞれである。その事件をもはや忘れている人、無かったことにしたい人、自分を正当化し自業自得だと非難する人、ひどく悔やんでいる人、そして助けられなかった自分を悔いて復讐しようとする人。
それぞれがどう過去を清算していくのかという観点で見ていくと面白かった。

最近でも、何十年も前の罪を探られて晴れ舞台から引きずり下ろされる現場を目撃する。本人が反省しているのか、本人がそれに対してどのような態度を取っているのかなどということを鑑みずに、一律に罪を犯していたという事実だけで罰を受けるというのはどうなのだろうかと思う。
起きてしまった過去は変えられないし、犯した罪は消えないけれども、その罪に対して罰を受けずとも自分なりに清算している人まで罰を受ける必要があるのかという疑問がある。
ここでの罰とは刑事罰ではない。もちろん刑事事件の罪は刑罰で償うべきであるが、罪には問われない程度の過ちに関してである。
昨今ネットでは"炎上"という形で罰を受けることが多い。昔と違いSNSの発展で、個人と個人が簡単に繋がってしまうため、個人に対して直接文句や悪口を言うことができ、それが積み重なると一個人にとっては受け止めきれない量になり、一つ一つは微々たるものでも結果的にきつい罰を受けることになる。
これで罰の代わりになるかという議論ではなく、これが私刑であることを理解しているのかということである。
法治国家では私刑は禁止されている。本当に裁くべきが議論がされぬまま個人的価値観で他人を裁くことは許されない。
そういうちょっとしたエラーが許されない世界は生きづらいし、トップに立つリスクが高すぎるなーと思っちゃう。求められてるものがリーダーシップやエンターテイメント的なスキルである場合、全ての人間に好かれることは実質不可能なため、多少のヒューマンエラーは理解される社会になればいいなと思う。ミスしたことない人間なんていないだろうし。

まあ、結局この映画の主人公は私刑を執行しちゃうわけですが、復讐の展開に関してはめちゃくちゃテンション上がったし面白かったので評価は割と高め。
胸糞展開?グロ展開?はちょっとあるので注意....
「死せる孔明生ける仲達を走らす」的展開よかったな。
Kenjo

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