みかんぼうや

プロミシング・ヤング・ウーマンのみかんぼうやのレビュー・感想・評価

3.8
【毒をもって毒を制す!「キル・ビル」より遥かに恐ろしい女の復讐劇】

ちょっと頭が疲れ気味なので、考える系の作品はやめてエンタメ性強めの作品を・・・と思い本作を選択しましたが、いや、かえって疲れ倍増しました。これは下手に暴力性の高い復讐劇(「キル・ビル」あたり)なんかよりも、よっぽど怖いです。

なんでしょう、私、人に言えないやましいこともしてないですし、人に知られるとまずい何かがあるわけでもないのに(もちろん本作の事件のようなシチュエーションに関係したことなども一切ない)、何故か観ながら徐々に心がソワソワしてきました。というのも、「自分が全く意識していないうちに、または忘れてしまったような人を傷つけてしまった過去があるんじゃないか!?」という気持ちになってしまったからです。視聴者側のそんな気持ちを駆り立てた時点で、製作陣の思うがツボですね。

ライアンが出てきた時点で、正直、後半の展開はだいたい予測できましたが、本当のラストのラストの展開まではもちろん想像していなくて、観客側の一歩先の展開までしっかり抑えてくるあたりは、エンタメとして申し分なく、さすが人気作だなー、と唸らされました。

ブリトニー・スピアーズの「Toxic」のバイオリンバージョンが予告から本作のメインテーマとして使われていてとても印象的でしたが、まさに毒をもって毒を制す内容でしたね。

そして、物語とは直接関係ありませんが、後半のかなり大事なシーンで、私が大好きな「狩人の夜」で子どもが歌う物悲しい歌(とても印象に残る歌)がまさかの登場!なかなかにマニアックな作品の楽曲だと思うので、喜びと驚きと同時にどういうメタファーなのか、色々と調べていたところ、なんと劇中でキャシーの両親が観ていた昔の映画が「狩人の夜」そのものだったことを知りなおさらビックリ!これは気づきませんでした。

そんな隠れたアクセントと、復讐劇としてのエンタメ的面白さもあり、観終わった後はどっと疲れはしましたし、何度もリピートしたいとは思いませんでしたが、話題作だったことは納得のなかなか切れ味の鋭い作品で、思いっきり楽しませていただきました。
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