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映画 えんとつ町のプペルのSHIOのネタバレレビュー・内容・結末

映画 えんとつ町のプペル(2020年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

Filmarksさんの試写会で鑑賞させていただきました。

人々が夢見ること、空を見上げることを禁止された町で唯一星を信じ上を見続けるルビッチのひたむきな姿が胸を打ちました。

えんとつ町の情景はもちろん、登場キャラクターひとりひとりにも個性が際立つような緻密な描き込みがなされ、繊細で多彩な色遣いが目を楽しませてくれる映画です。
煙に覆われた町はどこか煤けた印象のセピア色で表現されている反面、ルビッチの回想に登場するブルーノや星の話をするルビッチの瞳、ブルーノからもらったブレスレットのとんぼ玉はまるで空のように澄んだ色にキラキラと輝いているのが印象的でした。

2020年初旬に行われていた舞台版を観たのみでの鑑賞でしたが舞台版とはまた違った印象があり、特に冒頭のハロウィンのダンスは観るものをえんとつ町へ引き込むような没入感のあるカメラワークで一気に心を掴まれます。
主観目線で繰り広げられるトロッコでの爆走シーンは自分がいるのが座席の上だということも忘れてジェットコースターに乗っているときのように冷や冷やしてしまいました笑
要所に挟まれる挿入歌は、たびたび過剰かな?と思われるところもありますが楽曲そのものが素晴らしくシーンの重要性、メッセージ性を畳み掛けるという点では非常によく働いていたと思います。

文頭でも書いたように子ども(ルビッチ)がひたむきに父の物語や星を信じ行動する真っ直ぐな姿が胸を打つのですが、父であるブルーノのセリフやナレーションに西野さんご自身の現代社会への風刺や思想が強く出すぎていたのは少し残念でした。
ただ、叩かれることに怯え口を噤んでしまうなど多かれ少なかれ誰もに覚えのあることに対して恐れずに上を見ろと力強く鼓舞するようなブルーノの言葉はきっと人々の心を勇気づけるとも思います。

プペルが一貫してルビッチを肯定し、包み込むような優しさを見せるところ、またその柔らかい声音が好きです。プペルがブレスレットを渡しにルビッチの元を訪れるシーンは涙無しには見られません。
窪田正孝さんの穏やかなお人柄とプペルのキャラクターがとても合ってました。

夢見ることをやめない、挑戦することを諦めない、そんなメッセージを様々な立場のキャラクターたちから感じられる素敵な映画でした。公開されたらまた劇場で観たいです。
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