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17歳の瞳に映る世界のsilkのレビュー・感想・評価

17歳の瞳に映る世界(2020年製作の映画)
4.4
んんんんとりあえず邦題に納得できん。
"17歳は思春期なので"どうとかいう話じゃないし、瞳に映る云々以前に腹の中に子どもがいてそれを殺めるのだという決断と実感、体調不良や極限の精神状態を身をもって体験してるんですよっていう。

アメリカと日本について
・政治に詳しいわけではないけれど、それでも2016年のトランプvsクリントン、2020年のトランプvsバイデンを思い出さずにはおられない。ネットで調べたところ、主人公の地元ペンシルベニア州は両年ともに激戦区だったそうだが、この映画ではかなり保守的な地域として描かれている。最近だと、トランプ支持者が多かった州ではCOVIDのワクチン接種率が低く、逆にバイデン支持者が多かった州ではワクチン接種率が高かった、みたいなデータを見た。この映画でもペンシルベニアでは「病院に行ったのに市販のチェッカーで妊娠の判定をする」「妊娠週の診断が間違っている」など、都会と田舎で科学レベルの差って大きいのかな?と思われるエピソードが出てきた。「アメリカは分断された国」とよく言われているけど、本当にそうなのかもしれない。
・「州によって中絶が許されている許されていない」という話の流れでもう一つ思い出されるのが「州によって同性婚が許されている許されていない」という話である。同じく宗教に関しても詳しいわけではないけれど、これは両者がキリスト教のsinにあたるからというのが大元の理由のはずだ。特定の宗教を信じているわけではない私から言わせると、何を信じるのも自由だし何が正しいのかは人それぞれだけど、だからといって議論しないとか人に強制するとかいうのは違うと思う。つまり、社会に中絶したい人や同性と結婚したい人がいて、それは本人達以外の誰かに迷惑や悪影響を及ぼすものではないのに、それを社会的に禁止するのはおかしいんじゃないかって思うのです。特に、キリスト教国家でもなんでもない日本にとっては両者ともsinではないはずなのに、理解が進まないのは何故なのか。
・ネットで調べたところ、数年前のデータだが、1年間でアメリカでは86万件以上、日本で16万件以上(未成年で1万件以上)の中絶手術が行われているそうだ。

セオドア・ペルランについて
Boy Erasedでとんでもない存在感を示していたセオドア・ペルラン氏だが、今回はなんとも言えず…地獄みたいな役だった。
何が地獄かって、別に人非人のクズってわけでも無く、現実にいそうなリアル…な感じが地獄なのだ。
たまたま長距離バスに乗っていたスカイラーを気に入って声をかけ、自分のうんちくを披露。メールをしつこく送り、応えられると受け入れられたと勘違い。それでも色々奢ってくれるしキスより先はしてこないしマシな方なんじゃないのと安堵するが、この思考こそ毒されてるんじゃないのっていう絶望。

冷たくて気持ちの悪い世界の中で、スカイラーとカウンセラーの女性が唯一温かくて優しくて救われた。この世界にも救いはあるのだということだろうか…。
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