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17歳の瞳に映る世界のoimoのネタバレレビュー・内容・結末

17歳の瞳に映る世界(2020年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

サウスカロライナ州で中絶した女性を死刑に出来るよう刑法を変更することを検討しているという信じられないニュースを最近目にしたばかりだった。レイプや近親相姦の場合等も例外無し。「淫らな女を罰せよ」だそうで……もう空いた口が塞がらない。


本作中盤、オータムの妊娠が合意の無い性的暴行の結果であったことが示唆される、原題の問いが繰り返されるカウンセリングシーンの切実さには胸が張り裂けそうだった。
あのシーンを見るまで、お母さんは優しそうだし理解もありそうだからお母さんに相談してみたら…とほんのり思っていた。でもあのシーンで、何故オータムが誰にも、傍で親身に支えてくれるスカイラーにすらも頑なに自分を見せなかったのかが痛い程に理解出来てしまう。
自分がそういう風に扱われたことを、被害者であるということを近しい人に知られたくない。同情であれ蔑みであれ寄り添いであれ、相手の反応に完全に叩きのめされて本当の被害者になってしまうことが分かっていたから…。あの質問を繰り返されるまで、オータム自身自分を被害者だと思っていなかったんじゃないかな…。そう思いたくなくてその部分に蓋をしていたように見えた。
本当に深刻に苦しんでいる時程助けを求められず固く心を閉ざしてしまう。

冒頭、オータムが野次を飛ばされながら弾き語っていた歌の中に彼女の現状が詰まっていたんじゃないかと思う。
根本的な問題は何一つ解決しないまま終わってしまうのがリアルでやるせない。


自分一人の力では降り掛かる火の粉を払うだけで精一杯。それなのに、それを振り払うことすら、産まないという選択をすることすら許されないのか。自分を守ろうとすることが死に値する程の罪だとは、私にはとても思えない。
100万歩譲ってそうだったとして、それなら少なくとも相手の男にも同じ罰を与えるべきだろう。

オータムが安全に眠れる場所も無く空腹と痛みを抱えて知らない街の雑踏の中で朝を待つ間、彼女の体でマスかいた男はいつも通り生活して暖かい布団で能天気に眠っていたんだろうな。
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