うずくまる

世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカのうずくまるのレビュー・感想・評価

4.0
作品中、ホセ・ムヒカが「文化とは、壁に絵を掛けることでも、映画を製作することでもない。生活上でどう判断するかという価値基準のことだ。それをこれから作っていかなくてはいけない。」というようなことを言っていて、ハッとさせられた。

お花を作っているのも、貧しい者が花を作れば、金持ちが買い、文化がそこに生まれるという思想からなんですね。深い…。

結局マネーゲーム的な稼ぎ方というのは、ただ分かりにくく誰かから搾取しているだけなんだよな、ということも
あらためて考えさせられました。(応援したい企業の株を買うのはいいことだと思いますが)

また本作は彼の過激な政治活動家としての面も収めています。まるでおとぎ話の中から飛び出してきたような風貌からは想像できないハードボイルドな人生…銃創30個あるとか、リアルネズミ小僧でしたとか。
「悪は時に善になり、善は時に悪になる」
そう、強い願いや思想は常に表裏一体で、善悪というのは固定されないんですね。政府ってその国で一番強いヤクザで、税金はみかじめ料みたいなもんだし。だから普遍的な法律が必要という構造をあらためて改めて認識しました。

あるいは社会活動に献身してきて、最愛の妻との間に子どもを残せなかった老兵の哀愁なども描かれていて、泥臭く、人間愛に身を捧げてきた、ただの一人の人間として、「あるところに、こんなやつがおったそうな」みたいな姿勢で撮っているのが好感が持てました。

欲を言えば、犯罪者扱いで十数年投獄されていたムヒカが、どうやって大統領になったのか、どうやって妻が副大統領になったのかももう入れて欲しかったけどそれは自分で探してみなさいよ、ってことなのかな。日本ではあり得ないことですよね。事前学習なしでいったため?が一杯頭に浮かびました。

しかし、「批判についても感謝する。悪いところは速やかに改善する」とは…提案にはすぐdisagreeと突っぱねてしまうどこか国の勘違いマッチョや、説明責任を果たせと言われて「説明する必要はない」「お答えは差し控える」ばかりで逃げ回る古狸に聞かせてやりたいですね。器が違う。
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