イチロヲ

El asesino de muñecas(原題)のイチロヲのレビュー・感想・評価

El asesino de muñecas(原題)(1975年製作の映画)
4.5
母親により女の子として育てられた少年が、女性の姿をマネキンに幻視しながら、猟奇殺人を引き起こしていく。人形に取り憑かれている少年の倒錯劇を描いている、スペイン産のサイコ・スリラー。

血を見ると失神してしまう体質なのに、どうしても心臓外科医になりたいヘナチョコ少年が、脳内に潜んでいる亡き姉の存在と向き合う。サイコキラーのモードに入ると、貴婦人風の仮面とウィッグをつけて、人形を攻撃(=人間を殺害)してしまう。

中盤部からは、普通の男の子として暮らすことができない少年が、自分自身を見つめ直していく展開に入る。熟れた伯爵夫人に誘惑されたり、瑞々しい娘に急接近したり、「脱・童貞もの」のファッション・ポルノのような展開に入る。

現実と虚構が入り乱れる観念的なカットを何度も挟み込んでくる作風になっており、ユニセックス風の主演男優が、歌舞伎の女形を彷彿とさせる芝居を見せてくれる。まるで不安定なシーソーに乗りながら鑑賞しているような気分にさせられる、クリーピーな逸品。
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