イチロヲ

リトル・ショップ・オブ・ホラーズのイチロヲのレビュー・感想・評価

4.0
小さな生花店に勤務している不器用な青年が、人語を喋る不気味な吸血花を入手してしまう。植物に翻弄される青年の奮闘劇を描いている、ホラー・コメディ。1986年にリメイク版が公開されている(ミュージカル舞台版の映像化)。

ボスから否定されてばかりの日常により、自尊心の喪失状態に陥っている青年が、日本の庭師からもらった謎の植物に光明を見いだそうとする。筆者は"褒めてくれない親"に育てられた過去をもつため、主人公への感情移入が半端ない。

植物が成長して、吸血花であることが判明すると、主人公に関わる人々が事故的に死亡していく、ナンセンス・コメディが動き出す。歯科医のシークエンスでは、新人時代のジャック・ニコルソンが、マゾヒストの患者役を熱演している。

大衆心理を投影させている風刺劇とスラップスティック調の逃走劇が、シンプルに面白い。そして、"良かれと思って"やったことが裏目に出てしまう感覚と"ダメ人間讃歌"の極地ともいうべきラストに落涙を禁じ得ない。
イチロヲ

イチロヲ