たく

生きちゃったのたくのレビュー・感想・評価

生きちゃった(2020年製作の映画)
3.7
自分の気持ちを押し殺して生きてる男がいかに自分に向き合うかという話で、仲野太賀の暗~い演技がどんより重くて最初ついていけなかったんだけど、最後まで観ると大人の苦い青春映画という感じになってた。英語ならスラスラ話せるのに日本語だと本当の気持ちが言えないのを「日本人だからかな?」と逃げるのが彼の言い訳になってて、結局は一人の人間としてどう行動するかってところが問われていく。

ドキュメンタリー風の映像で描かれる日常が、唐突なレ・ロマネスクの登場から急ハンドルを切って世の中の理不尽を詰め込んだような展開になっていくのには驚いた。レ・ロマネスクを知らなかったんだけど、彼の風変わりな応援歌は同じ石井裕也監督の「川の底からこんにちは」の異様にテンション高い社歌を連想した。

男二人の青臭いほどの友情がどんよりした暗さを中和するバランスが良く、「葛城事件」で注目した若葉竜也は最近よく見るようになって今後ますます期待の役者さん。
でも何と言っても大島優子の演技が素晴らしかった!
初登場シーンの平凡な主婦感には本当に大島優子?って一瞬目を疑ったし、あっちゃんに現実的な要求をする冷めた感じとか、汚れ仕事のシーンもすごくて、覚悟を決めた女の強さが滲み出てた。AKB出身役者では前田敦子・川栄李奈が頭抜けてたけど、大島優子も今後注目だね。
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