かわちゃん

ファヒム パリが見た奇跡のかわちゃんのレビュー・感想・評価

ファヒム パリが見た奇跡(2019年製作の映画)
4.0
インドカレー好きの身でありながら、
お隣のバングラデシュを「ビリヤニがある国」
くらいの認識でしが捉えていなかったのがお恥ずかしいところ。
今回のファヒム一家のように多くの難民がいるのだとか。

クレバーなファヒムだから、チェスだけでなく
仏語もぐんぐん上達、異文化だった生活にもすぐに慣れていく。
それに対して、仏語が全く身に付いていかないお父さんの野暮ったさっぷり。
でも、喜捨のコインを感謝しつつマダムに返しにいったり、
祖国ではカッコ良い消防士だったお父さんは、正義感がめちゃくちゃ強い。
勘違いしているのだけど、覚えたての「ボナペティ」を
毎度使ってくる姿が子どもばりに愛らしくって憎めない。
祖国に残してきた他の家族は物語にあまり出てこないのだけど、
このお父さんを中心に回っているであろうことがよく見えてくる。
「俺が教えたのにな」と言ってファヒムとの団らんのチェス戦に負ける姿は、
悲しいけど、どこか誇らしそうにも見える。

異国への移住ものとしては、
『カセットテープ・ダイアリーズ』も記憶に新しい。
異国/異文化/マイノリティな世界で主人公が奮闘していく話って、
毎度のこと勇気をいただいております。
この手のものには、罵声を浴びせられたりだとか、
人種差別描写が付き物だと思っていたのですが、
今作の舞台が多くの難民を受け入れているフランスだからか(?)、
直接的な非難描写はあまり出てこなかったと記憶しています。
しかし、後半に出てくるバングラデシュ難民部落の生活は
時代を巻き戻したような原始的なもので、凄まじい光景。

映画を通して難民への想像力を広げることができたなら、
ファヒムのように才能ある子どもだけでなく、なんでもない普通の難民までもが
普通に暮らせるための一歩にもなり得ると思うのですなぁ。
なのでこの手の映画、じゃんじゃん作って届けてほしいものです。
かわちゃん

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